2023年11月06日
離婚や遺産相続が話し合いでまとまらない場合や、金銭トラブルや労使トラブルなどに巻き込まれた場合、最終的な解決方法として裁判があります。しかし気になるのがその費用。費用倒れにならないよう、あらかじめ相場を把握しておくことが大切です。この記事では、裁判費用の内訳や費用相場を解説。また、裁判費用は誰が支払うのかや裁判費用を抑えるポイント、費用が足りないときの対策についても紹介します。
目次
裁判には、人と人や人と会社など、私人同士の紛争を解決するための「民事裁判」と、被告人が有罪か無罪か、有罪の場合はどの程度の刑罰を与えるかを決める「刑事裁判」があります。それぞれ扱う内容に違いはありますが、どちらも裁判にかかる費用は大きく分けて「訴訟費用」と「弁護士費用」です。
訴訟費用は裁判所に支払う手数料のほか裁判をおこなうために必要な費用で、弁護士に依頼しなくても発生します。一方の弁護士費用は弁護士に支払う報酬などで、弁護士に依頼した場合のみかかります。
訴訟費用とは、裁判所に支払う手数料や書類を送るための郵便切手代、証人の旅費・日当など、裁判に必要な経費です。金額の目安を項目ごとに見ていきましょう。
訴訟を起こすには、訴状に申立手数料として印紙を貼付(100万円を超える場合は現金でも可)し、裁判所に提出します。申立手数料は裁判手続の種類により異なり、民事訴訟費用等に関する法律で決められています。
例えば民事訴訟の場合、訴訟の目的価格に応じて次の表の手数料がかかります。
訴訟の目的価額 | 裁判所手数料 |
---|---|
100万円まで | 10万円ごとに1,000円 |
500万円まで | 20万円ごとに1,000円 |
1,000万円まで | 50万円ごとに2,000円 |
1億円まで | 100万円ごとに3,000円 |
50億円まで | 500万円ごとに1万円 |
50億円超 | 1,000万円ごとに1万円 |
裁判手続では、被告や訴訟相手、債権者などに書類を送る費用がかかるため、裁判所にあらかじめ決められた金額を納めます。これを「予納郵便代」と呼びます。
予納郵便代の金額は裁判所ごとに異なり、例えば東京地方裁判所の場合、当事者(原告と被告)が1名ずつの場合は6,000円、以降当事者が1名増えるごとに2,000円ずつ加算されます。ただし、原告が複数でも共通の代理人がいる場合は加算されません。
予納郵便代の納付方法は裁判所によって異なり、決められた組合せの切手で予納する場合と現金(または振り込み)の場合、切手と現金どちらか選べる場合があります。なお、残った予納郵便代は裁判後に返還されます。
裁判に証人を呼ぶために日当や旅費を支払うことがありますが、直接証人に手渡すと訴訟費用になりません。訴訟費用にするためには、証人を申請した側があらかじめ裁判所に決められた額を予納する必要があります。日当の上限は8,050円で、旅費は実費で精算します。なお、警察官が職務で出廷する場合や証人が親しい間柄の場合など、日当や旅費は放棄されることも多いです。
鑑定料は、医療など専門性の高い分野について学識経験を持つ第三者に意見を求めたときに発生します。費用は鑑定事項により異なりますが、一般的に数十万円程度かかります。
刑事事件では謄写費用もかかります。謄写費用とは刑事事件の記録をコピーする費用で、調書1枚につき20~40円程度です。事件により枚数は変わりますが、1~2万円程度見込んでおくと良いでしょう。
裁判で必要な弁護士費用は主に次の4種類です。
それぞれどのような費用なのか見ていきましょう。
「着手金」とは弁護士に依頼を受けてもらうための費用で、原則「委任契約」を交わす際に支払います。裁判の結果に関わらず必要で、希望通りの成果が上げられなかったとしても基本的に返金されません。
「成功報酬費用」は裁判の成功度合いに応じて支払う費用で、全面敗訴の場合は発生しません。刑事裁判では判決内容に応じて、民事裁判では「相手が支払いを命じられた金額」や「和解が成立した金額」など裁判で認められた経済的利益に応じて支払います。
「日当」とは弁護士が事務所以外で活動するのに必要な費用で、例えば裁判のために裁判所に出向く際などに発生します。移動時間に応じて金額を定めている事務所が多く、近場の裁判所であれば不要な場合もあります。
実費とは裁判に必要な実際にかかる経費で、例えば次のようなものが挙げられます。
このほか、出張が必要な場合は交通費や宿泊料などが該当します。これらは弁護士報酬と別に、実際にかかった費用を案件終了時に精算します。
かつての弁護士費用は、所属する弁護士会が制定した弁護士報酬基準により決められていました。2004年に自由化されましたが、現在でも日弁連の旧報酬規定をもとに金額を設定している事務所が多いため、これを相場の参考にすることができます。
着手金 | 事件の経済的利益の額が300万円以下の場合:(経済的利益の)8% 300万円を超え3000万円以下の場合:5%+9万円 3000万円を超え3億円以下の場合:3%+69万円 3億円を超える場合:2%+369万円 ※事件の内容により、30%の範囲内で増減額できる ※着手金の最低額は10万円 |
---|---|
報酬金 | 事件の経済的利益の額が300万円以下の場合:(経済的利益の)16% 300万円を超え3000万円以下の場合:10%+18万円 3000万円を超え3億円以下の場合:6%+138万円 3億円を超える場合:4%+738万円 ※事件の内容により、30%の範囲内で増減額できる |
日当 | 半日(往復2時間を超え4時間まで):3万円以上5万円以下 1日(往復4時間を超える場合):5万円以上10万円以下 |
着手金は見込まれる経済的利益の額、報酬金は確保した経済的利益の額を基準に計算します。
例えば、500万円の貸金返還請求訴訟を提起し、400万円を回収した場合の目安は次の通りです。
着手金:500万円×5%+9万円=34万円 報酬金:400万円×10%+18万円=58万円 |
裁判には法律の知識が必要なため、弁護士に代理人を依頼するのが一般的です。しかし、裁判により得られる利益を弁護士費用が上回る場合などは、弁護士なしで裁判を起こす場合もあります。
弁護士に代理人を依頼せず、自分で裁判を起こすことを「本人訴訟」といいます。書類の提出や出廷など自分自身でおこなう必要がありますが、費用を大幅に抑えることが可能です。
ただし、法律の知識が少ないことで正しい主張や立証ができず、一般的に不利な結果に繋がりやすいです。このため本人訴訟が向いているのは、事実関係がはっきりしていて争うべき点がない場合など、一部のケースに限られます。
「少額訴訟」とは、60万円以下の金銭支払いを求める場合にのみ利用できる訴訟手続きで、原則1回の審理で即日判決が言い渡されます。法律に詳しくない人でも利用できるよう手続きは一般的な裁判より簡易的なうえ、短期間で問題解決が図れます。
裁判所に支払う手数料や予納郵便代は通常の裁判と同様ですが、目的金額が少ないことから費用は数千円程度で済みます。
裁判をする場合、費用を相手方に請求することができるのでしょうか。示談や調停、和解の場合についても合わせて押さえておきましょう。
民事裁判の場合、訴訟費用は原告側が裁判を起こす際に立て替え、裁判で判決が確定後に敗訴した側が支払うのが原則です。民事裁判での敗訴は自分の申し立てや主張が認められない判決が出ることを指し、原告には「賠償請求や訴えが棄却される判決」が、被告にとっては「原告の請求内容が認められる判決」が敗訴となります。また、判決で原告の請求が一部だけ認められた場合(一部勝訴)は、勝った側も訴訟費用の一部を負担するケースもあります。
なお、刑事裁判の訴訟費用は無罪にならない限り被告人が負担します。
弁護士費用は当事者がそれぞれ負担するのが原則で、裁判に勝っても相手に弁護士費用を請求することはできません。
しかし、労災裁判や離婚裁判などで損害賠償請求が認められた場合は弁護士費用も損害となるため、損害賠償金額に弁護士費用を上乗せして請求することができます。ただし、この際上乗せできるのは請求額の10%程度で、全額負担してもらえるわけではありません。
示談や調停では互いに譲歩しあって話し合いで解決するため、弁護士費用まで支払われることはほとんどありません。裁判で和解が成立した場合は、裁判所の判断で弁護士費用や遅延損害金を考慮し、調整金の名目で多少上乗せされることもあります。
訴訟費用と弁護士費用を合わせると最低30万円程度かかるため、裁判をためらう方も少なくありません。しかし、費用を抑えて裁判を起こす方法もあるので、あきらめる前に検討してみてはいかがでしょうか。
法テラス(日本司法支援センター)は、法的トラブル解決のために作られた公的機関です。経済的に余裕がない方を対象にした無料法律相談を実施するほか、一般より安い費用で弁護士に依頼できます。例えば、金銭事件の場合請求金額ごとの実費と着手金は次の通りです。
出典:日本司法支援センター 法テラス 価格は全て税抜
裁判で勝った場合、上記とは別に経済的利益3,000万円までは入金額の10%、3,000万円を超える部分は6%程度の報酬金が発生します。
例えば500万円の貸金返還請求訴訟を提起して400万円を回収した場合、通常は着手金34万円+報酬金58万円+実費が相場です。法テラスを利用すれば、着手金22万円+報酬金40万円+実費3.5万円なので、相場より弁護士費用を抑えられます。
また、相手方から当面取り立てができない場合、報酬金は法テラスが立て替えてくれます。さらに、収入や資産が一定額以下などの条件を満たせば、着手金や実費を立て替えてもらうことも可能です。
弁護士費用は裁判費用の大部分を占めるため、弁護士に依頼しなければ裁判費用を大幅に抑えられます。このため、弁護士に依頼しなくても勝訴が見込める案件では、本人訴訟もひとつの手です。自分だけでは不安な場合は、司法書士に書類作成やサポートを依頼することもできます。司法書士は代理人にはなれませんが、弁護士に頼むより費用を抑えられます。
請求金額が少額で勝っても費用倒れになりそうな場合は、少額訴訟を検討してみましょう。対象は60万円以下の金銭支払いを求める場合のみですが、通常の裁判より手続きが簡易的なため、法律に詳しくない人でも利用できます。
貸したお金を返してもらえない、売買代金を支払ってもらえないといったトラブルには、「支払督促」が利用できます。支払督促とは、正式な裁判を経ずに判決と同様の支払命令の処分を得られる手続きです。弁護士なしで利用できるうえ、裁判所に支払う手数料も通常の裁判の半額程度で済みます。
弁護士特約は自動車保険のほか、生命保険や医療保険、火災保険などに付帯されていることがあります。例えば自動車保険の場合、対象は自動車による事故に限られるものが多いですが、中には日常生活のトラブルに全般に対応した弁護士特約が付いていることもあります。
加入している保険に弁護士特約が付いていれば、弁護士費用を負担してもらえるかもしれません。保険証書等で特約の有無と対象となるトラブルを確認してみましょう。
訴訟費用や着手金は裁判を起こす前に必要なため、裁判で取り戻せる自信があっても先立つものがなくて裁判ができないというケースも少なくありません。費用が足りず裁判をあきらめる前に、次の方法も検討してみましょう。
裁判を受ける権利は憲法で保障されています。このため、お金がなくて訴訟費用の捻出が難しい方のために、訴訟費用の支払を猶予する制度(訴訟上の救済)が設けられています。訴訟上の救済の申し立てが認められれば、訴訟費用の支払いを猶予してもらえます。
訴訟に必要な費用を支払えないことを証明するため、申し立てには収入を証明する書類や通帳の提出が必要です。また、裁判費用の免除ではなく一時猶予で、勝訴の見込みがない場合は利用できません。
着手金は委任契約時に一括で支払うのが原則ですが、多くの事務所では分割払いに応じてくれます。裁判では依頼から解決までに最低でも半年程度かかるため、この間に支払えれば問題ない場合が多いです。
訴訟上の救済や法テラスの弁護士費用立て替え制度を利用できない場合は、最終手段としてローンを借りるという方法もあります。
裁判費用に使えるローンにはフリーローンやカードローンがあります。どちらも用途を限定せずに利用できますが、フリーローンは一括で借り、カードローンは必要な都度借り入れるという違いがあります。
裁判費用としてまとまった金額を借りるなら、フリーローンがおすすめです。銀行のフリーローンは審査は厳しめですが、比較的低金利で借りられます。
裁判を起こしたからといって必ず要求が通るとは限りません。また、勝訴が見込めたとしても手続きの開始から支払いを受けるまでには数ヵ月から数年かかるため、できるだけ金利の低いローンを選ぶことが大切です。
銀行のフリーローンを選ぶならクラウドローンがおすすめです。希望する借入条件を登録すれば、融資可能な複数の銀行から直接プランの提案を受けられます。利用可能なプランだけを比較できるので、効率的に低金利のフリーローンを探せます。
手続きはオンラインで完結するので、忙しくて銀行窓口に行けない方も利用してみてはいかがでしょうか。
裁判費用には訴訟費用と弁護士費用があり、弁護士費用は判決に関わらず依頼した当事者が負担します。必要な金額は裁判の種類や難易度により異なるほか、弁護士事務所によっても差があります。無料相談などを利用して複数の事務所の費用を比較したうえで、信頼できる弁護士に依頼しましょう。
「どの銀行が融資をしてくれるか分からない」をクラウドローンが解決
クラウドローン(https://pre.crowdloan.jp/)は、個人が銀行から低金利でマイカーローン、教育ローンなどの融資を受けられる国内唯一のプラットフォームです。
融資の目的や時期、金額などをクラウドローンに登録すると、各銀行が融資可能な金額や金利のプランの直接提案してくれます。時間と労力をかけずに複数の銀行からより条件のよい融資を見つけることができます。
詳しくはこちら
クラウドローンとは
“借りたい”を登録して
お得な提案を待つだけ
融資をしたい銀行から、直接プラン提案を受けることで、
資金を必要としている一人でも多くの人に、融資の機会を提供します。
離婚、遺産相続、金銭トラブル、労使問題などが解決しない際に裁判を検討することは一つの選択ですが、その際に気になるのが費用です。この記事では、裁判費用の内訳、相場、誰が負担するか、そして費用を抑える方法などを明確に解説しています。裁判を考えている方にとって、事前に知っておくべき重要な情報が網羅されており、賢く裁判を進めるための貴重なガイドとなるでしょう。