実質年率は、利息に手数料などの費用を加えた負担の総額を、実際に使えるお金と残高に対する年率で表した数字です。アドオン率は最初の借入額に一律の率を掛けて手数料を決める方式で、残高が減っても手数料が減らないため、同じ数字でも実質年率よりずっと重くなります。アドオン年5%・100万円・3年は、実質年率に直すと約9.31%です。
貸金業者のローンとクレジットの分割払いには、実質年率の表示が法律で義務付けられています。一方、銀行ローンの「金利」は、保証料や取扱手数料を含まない場合があります。ローンを比べるときは、実質年率か、手数料を含めた総支払額で比べてください。この記事では、法令が定める実質年率の意味、表示の種類ごとの違い、換算の方法と計算例を整理します。
目次
貸金業法14条は、貸金業者が示す「貸付けの利率」を、利息と「みなし利息」の合計を元本で割った年率と定めています。みなし利息は同法12条の8第2項の定義で、礼金、割引金、手数料、調査料など、名目を問わず貸付けに関して受け取る元本以外のお金を指します。「手数料」と名前を変えても、原則として実質年率に含まれるということです。
例外は限られています。公租公課、強制執行などの公的手続の費用、上限内のATM利用料、カード再発行の手数料などです。貸金業法施行令は、ATM利用料の上限を1万円以下で110円、1万円超で220円(消費税込み)としています。利息制限法3条も、上限金利の判定では手数料などを利息とみなすと定めています。
計算の分母にも決まりがある点に注意してください。貸金業法施行規則の別表は、元本を「実際に利用可能な貸付けの金額」と、その後の未返済額で数えます。借入時に手数料を差し引かれると、手元に入るお金が減るので、同じ返済額でも実質年率は上がります。表示は少なくとも小数点以下1位までと定められています。日本貸金業協会は、実質年率が契約書の約定利率と必ずしも一致しないと説明しています。
ローンやクレジットの広告には、実質年率のほかにもいくつかの率や金額が出てきます。法令上の位置づけと、何が含まれるかを並べると次のとおりです。
| 表示 | 含まれるもの | 根拠 | 使われる場面 |
|---|---|---|---|
| 実質年率(貸付けの利率) | 利息と手数料・調査料などのみなし利息。上限内のATM利用料などは除く | 貸金業法14条・12条の8、施行規則11条 | 消費者金融・信販会社のキャッシングやカードローン |
| 手数料率(割賦販売法) | 金利、信用調査費、集金費、事務管理費など名目を問わない手数料の総額を年利にしたもの | 割賦販売法30条・35条の3の2、施行規則38条・69条・70条 | クレジットカードの分割払い、ショッピングローン |
| 100円あたり手数料額 | 利用額100円に対する手数料の円額 | 事業者の任意の表示 | カード会社や販売店の手数料表 |
| アドオン率 | 当初の元本×率×年数で決めた手数料 | 実質年率を明瞭に書かない表示は景品表示法の告示で不当表示 | 実質年率と並べて示される場合がある |
| 金利(銀行ローン) | 約定の利率。保証料を含むかどうかは商品ごとに異なる | 貸金業法の対象外。告示により、ほかの費用の内容と額を明記すれば足りる | 銀行・信用金庫のマイカーローン、カードローンなど |
割賦販売法施行規則は、分割払いの手数料率を年利建てで0.1%単位まで示し、それ以外の料率を示さないことを求めています。広告でアドオン率を前面に出せないのはこのためです。また、昭和55年の公正取引委員会告示第13号(現在は消費者庁が所管)は、アドオン率や月利、日歩だけを示して実質年率を明瞭に書かない表示を不当表示としています。貸金業法16条も、貸付けの利率以外の利率を貸付けの利率と誤解させる表示を禁じています。
銀行ローンは貸金業法の対象外です。告示は、利息を年率で示し、利息以外のすべての費用の内容と金額か率を明記していれば、実質年率を書かなくても不当表示にあたらないとしています。銀行の商品説明書に「金利(保証料込み)」や「取扱手数料3,300円」と書かれているのは、この形です。大東銀行のマイカーローンは「ご利用利率(保証料を含みます)」とし、別にお取扱手数料3,300円(税込)を示しています。北陸銀行のマイカーローンは、保証会社がオリエントコーポレーションになる場合、保証料として金利に年1.60%を上乗せすると書いています。銀行の金利は、保証料と手数料の扱いを確かめてから比べる必要があります。
アドオン方式では、手数料を「借入額×アドオン率×年数」で決めます。100万円をアドオン年5%で3年借りると、手数料は100万円×5%×3年=15万円で、総額115万円を36回で払う形になり、月額は約31,944円です。一方、実質年率5%の元利均等で同じ100万円を36回で返すと、月額は約29,971円、総支払額は約1,078,952円です。同じ「5%」でも、総支払額に約71,000円の差が出ます。
差が生まれるのは、元利均等では残高が減るにつれて利息も減るのに、アドオン方式では最初の100万円に対して3年分の手数料を固定するからです。アドオン年5%の総額115万円を元利均等の年率に直すと、約9.31%になります。換算は、月額が総額÷回数と一致する月利を探し、12倍して年率にしました。割賦販売法施行規則の別表は、初回の支払日までの期間が2か月未満なら12分の1年として計算できるとしており、この方法はそれに沿った簡略化です。
カード会社の手数料表は、この関係をよく表しています。三井住友カードの分割払いの表は、利用金額100円あたりの手数料額を3回で2.46円、12回で9.84円、24回で19.68円としています。いずれも「0.82円×回数」で、アドオン率に直すと年9.84%相当です。ところが、同じ表の実質年率は3回で14.70%、12回で17.69%、24回で17.88%、60回で17.03%と、回数で変わります。上の方法で換算すると、掲載の実質年率とすべて一致しました。
| 支払回数 | 100円あたり手数料額 | アドオン率相当 | 掲載の実質年率 | 換算した実質年率 |
|---|---|---|---|---|
| 3回 | 2.46円 | 年9.84% | 14.70% | 14.70% |
| 12回 | 9.84円 | 年9.84% | 17.69% | 17.69% |
| 24回 | 19.68円 | 年9.84% | 17.88% | 17.88% |
| 60回 | 49.20円 | 年9.84% | 17.03% | 17.03% |
100円あたりの手数料額が小さく見えても、実質年率が低いとは限りません。ソニーストアが掲載するJACCSの分割払いの表では、ゲスト購入の3回払いは100円あたり3.35円ですが、実質年率は19.99%です。同じ表の60回払い(サインイン購入)は23.50円で、実質年率は8.64%です。回数が少ないと、手数料額は小さくても年率は高くなりやすいことが分かります。手数料額は支払総額の計算に、実質年率は条件の比較に使うと考えてください。
借入時の手数料も実質年率を押し上げます。仮に100万円を年3.0%・36回で借りると、月額は約29,081円、総支払額は約1,046,924円です。借入時に手数料3,300円を差し引かれ、受け取るのが996,700円になると、実質年率は約3.22%になります。仮に手数料が33,000円なら約5.23%です。手数料を別に払う場合は、総負担が約1,050,224円、約1,079,924円になります。これらは計算の仕組みを示すための仮定の数字です。
銀行ローンは実質年率の表示義務がないため、自分で総額を出すのが確実です。大東銀行の条件(年2.25%・保証料込み、取扱手数料3,300円)を、100万円・36回の元利均等に当てはめると、返済総額は約1,035,067円、手数料を足した総負担は約1,038,367円です。総負担を実質年率の考え方で年率に直すと約2.47%になります。変動金利なので、返済中に金利が見直されれば金額は変わります。
反対に、貸金業者の実質年率は、手数料を含んだ「上限の率」です。アコムは「貸付利率(実質年率)2.4%~17.9%」、アイフルは「3.0%~18.0%(実質年率)」と表示しています。利息制限法の上限は、元本10万円未満で年20%、100万円未満で年18%、100万円以上で年15%です。日本貸金業協会は、出資法の上限(年20%)を超える金利は刑事罰の対象と説明しています。実質年率の表示は、銀行ローンと比べるときの共通のものさしになりますが、どちらが有利かは借入額と期間、審査で適用される金利で変わります。
実質年率と総支払額は、契約前に受け取る書面に載っています。貸金業法16条の2と施行規則12条の2は、契約締結前の書面に、貸付けの利率、元本と利息以外に負担する金銭、利息の計算方法、将来支払う返済金額の合計額を書くよう定めています。ショッピングローンなら、割賦販売法35条の3の2により、現金価格、支払総額、支払回数、手数料率の表示が義務です。
残価設定型クレジットの月額と実質年率の関係は、残クレの月額がどう決まるかの記事で、公式の支払例を使って確認できます。
見積書や商品説明書を並べるときは、借入額、期間、返済方法をそろえ、手数料と保証料を足した総支払額を出してから比べてください。月々の支払額だけで比べると、回数が長いほうが安く見えてしまいます。
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調査日:2026年10月11日。金利と手数料率は改定されます。換算と試算は、月払いの元利均等で月利を12倍した簡略的な方法による概算です。
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