法人が経営者保証なしで融資を受ける道は、大きく3つあります。民間金融機関に「経営者保証に関するガイドライン」の要件を示して交渉する方法、信用保証協会の「事業者選択型経営者保証非提供制度」を使う方法、日本政策金融公庫(以下、公庫)の「経営者保証免除特例制度」を使う方法です。どの方法でも、法人と経営者のお金を分けていることと、決算書などを金融機関に開示していることが前提です。
保証協会の制度では、保証料率の上乗せと引き換えに経営者保証を外せます。公庫の特例は上乗せ利率がなく、代わりに要件1〜7のいずれかを満たす必要があります。どの制度も対象は法人で、要件を満たしても審査の結果によっては希望どおりにならない場合があります。
個人事業主は事業主本人が借主になるので、法人の「経営者保証」とは仕組みが違う点に注意が必要です。この点は後半で説明します。
目次
3つのルートの違いを先に表で示します。窓口と負担が異なるので、取引先の金融機関に相談するときの見取り図として使ってください。
| ルート | 対象 | 主な要件 | 追加の負担 |
|---|---|---|---|
| 経営者保証ガイドラインに基づく交渉(民間金融機関など) | 中小企業 | 資産・経理の分離、財務基盤の強化、適時適切な情報開示 | 金融機関の判断による(代替手法として金利の上乗せなどもある) |
| 信用保証協会の事業者選択型経営者保証非提供制度 | 法人 | 決算書等の提出、代表者への貸付金がない、債務超過でないか減価償却前経常利益が2期連続赤字でない、など(1)〜(5)をすべて満たす | 所定の保証料率に0.25%または0.45%上乗せ |
| 公庫の経営者保証免除特例制度 | 法人 | 要件1〜7のいずれかを満たし、返済が可能と見込まれる | 上乗せ利率なし(各融資制度の利率) |
経営者保証に関するガイドラインは、全国銀行協会と日本商工会議所が策定したルールです。2014年2月1日に適用が始まりました。法的な拘束力はなく、中小企業庁は「保証を解除するかどうかの最終的な判断は金融機関にゆだねられる」と説明しています。
ガイドラインが経営者保証なしの融資の前提として挙げる要件は次の3つです。1つ目は、資産の所有やお金のやりとりで法人と経営者を明確に区分・分離することです。役員報酬・賞与、配当、オーナーへの貸付などを社会通念上適切な範囲に収めることが含まれます。
2つ目は財務基盤の強化で、法人のみの資産や収益力で返済できる状態を目指します。3つ目は、金融機関に財務情報を適時適切に開示することです。
中小企業庁は、3要件の全部または一部を満たせば、保証なしで借りられる可能性や既存の保証を見直せる可能性があると示しています。金融機関は充足度合いに応じて、停止条件付保証契約などの代替手法も検討します。停止条件付保証契約は、財務情報の提出義務などの特約に違反しない限り保証債務の効力が生じない契約です。
信用保証協会の保証付き融資でも、経営者保証を外す選択肢があります。全国信用保証協会連合会(以下、全信保連)の案内によると、事業者選択型経営者保証非提供制度は令和6年3月15日に保証申込の受付が始まりました。保証料率を上乗せする代わりに、経営者保証を提供しない仕組みです。
利用できるのは、次の(1)〜(5)をすべて満たす法人です。(1)過去2年間、決算書等を金融機関の求めに応じて提出している。(2)直前決算で代表者等への貸付金がなく、役員報酬などが社会通念上相当な額を超えていない。
(3)直前決算で債務超過でないか、直前2期の減価償却前経常利益が連続して赤字でない。(4)決算書等の提出を続け、代表者への貸付金がなく役員報酬等が適切な範囲にある状態を保つと誓約する。(5)保証料率の引上げを条件に保証を提供しないことを希望する。
上乗せ幅は財務状況で変わります。(3)の2条件をどちらも満たす場合は所定の保証料率に0.25%、どちらか一方だけの場合や設立後2期の決算がない場合は0.45%が上乗せされます。この制度は個別の保証制度ではなく、無担保保険などが付いた保証に適用される扱いです。
全信保連が2024年2月に発行した「事業者選択型経営者保証非提供促進特別保証制度」の案内によると、この特別保証制度を使う場合は上乗せ分に国の補助があります。補助は保証申込日によって段階的に下がり、令和8年4月1日から令和9年3月31日の申込は0.05%です。補助の有無や現在の取扱いは、申し込む前に金融機関か地域の信用保証協会で確認してください。
公庫の国民生活事業は、ガイドラインに対応する制度として経営者保証免除特例制度を設けています。利率は各融資制度の利率のままで、上乗せ利率はありません。対象は、次の要件1〜7のいずれかを満たし、経営状況などから返済が可能と見込まれる法人です。
一体性の解消とは、事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付金などがないことを指します。公庫は、一部利用できない融資制度があることと、審査の結果希望に沿えない場合があることも明記しています。
経済産業省・金融庁・財務省は、2022年12月に「経営者保証改革プログラム」を策定しました。これを受けて金融庁は監督指針を改正し、2023年4月1日から適用しています。金融機関が経営者と保証契約を結ぶときは、どの部分が十分でないため保証が必要なのかを説明するよう求めています。どのような改善をすれば保証の変更・解除の可能性が高まるかも、個別具体的に説明し記録する対象です。
2026年4月1日からは、2023年3月以前に結んだ保証契約についても同様の説明・記録が監督上の着眼点として明確になりました。金融庁の資料では、2025年度上半期に民間金融機関の新規融資件数のうち55.8%が経営者保証に依存しない融資でした。
ただし、金融庁は「監督指針の改正は経営者保証を制限する趣旨ではない」としています。保証の要否は引き続き各金融機関の判断です。説明がない場合などは、金融庁の「経営者保証ホットライン」に相談できます。ホットラインは金融機関との個別トラブルのあっせんや仲介は行いません。
経営者保証は、法人の借入を経営者個人が保証する契約です。個人事業主の場合は、事業主本人が借主として返済義務を負います。保証人がいないことと、個人の財産で返済責任を負わないこととは別の話です。
ガイドラインの対象は、主たる債務者が中小企業で、保証人がその経営者である保証契約です。保証協会の事業者選択型と公庫の特例も、対象を法人としています。個人事業主の借入の準備は、個人事業主が銀行融資の審査に通るには?で整理しています。
法人が保証なしを相談するなら、まず役員貸付金を解消します。事業上の必要がない法人から経営者への貸付は、保証協会の制度でも公庫の特例でも要件に関わるからです。社長個人の私的な飲食費を会社の経費にしないことも、金融庁のパンフレットが一体性解消の例として挙げています。
次の準備は、決算書や試算表を取引金融機関へ定期的に提出し、業況を報告することです。ガイドラインは、税理士などの外部専門家による検証結果を合わせて開示することが望ましいとしています。役員報酬や配当の水準が説明できるよう、根拠を手元に用意しておくと話が早く進みます。
そのうえで、保証を求められたら不足している要件と改善の目安を金融機関に尋ねてください。何をすればよいか分からない場合は、中小企業活性化協議会が収益力改善の相談を受けています。保証を外す交渉に気を取られて借入額を増やさないよう、返済原資と資金使途も先に確かめておきましょう。必要書類の全体像はビジネスローン審査の必要書類を徹底解説も参考になります。
公的制度と並べて民間金融機関の提案も比較したい法人・個人事業主の方は、Tasukari(タスカリ)を使う方法もあります。スマホで3分程度入力すると保証会社の事前審査を受けられ、結果を見た複数の銀行から届いた提案の金利・返済期間を比較して選ぶ仕組みです。診断・事前審査は無料ですが、審査は保証会社・金融機関が行い、融資の可否・金利・提案の数を約束するものではありません。
調査日:2026年10月8日。制度の要件・保証料率・補助・利率は改定されることがあります。利用前に各機関の最新情報を確認してください。
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