銀行や消費者金融からお金を借りる契約には、法律で定められたクーリング・オフはありません。銀行の貸付けと登録貸金業者の貸付けは特定商取引法の適用から外され、銀行法と貸金業法にも申込みの撤回の規定がないためです。一方、訪問販売や電話勧誘で商品を買い、販売店経由で組んだショッピングローン(個別クレジット)は、割賦販売法で8日以内ならクーリング・オフできます。
借入契約をやめたいときは、時点によって手段が違います。契約前なら申込みの取下げ、契約後で借りる前なら解約、借りた後なら一括返済をしてから解約です。勧誘のときに事実と違う説明を受けて契約した場合は、消費者契約法の取消しを使える可能性があります。「8日以内なら何でもやめられる」と考えず、契約の種類と時点を先に確かめてください。
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クーリング・オフは、契約は守らなければならないという民法の原則に対して、法律が特に認めた例外です。国民生活センターは、一定の期間であれば無条件で申込みを撤回したり契約を解除したりできる制度と説明し、対象は法律が定めた取引に限られるとしています。消費者庁は、特定商取引法のクーリング・オフ期間を、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入で8日、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引で20日とし、通信販売には規定がないと案内しています。
特定商取引法26条1項8号ニは、他の法律で利用者を保護できる取引として政令で定めたものに、訪問販売などの規定を適用しないとしています。施行令の別表第二は、29号で銀行法上の銀行が行う業務を、30号で登録貸金業者が行う貸付けを挙げています。銀行法10条1項2号は銀行の業務に「資金の貸付け」を含めているので、銀行ローンも消費者金融の借入れも、特定商取引法のクーリング・オフの対象外です。消費者庁などの施行通達は、この除外を、他の法令で主務大臣が是正措置をとれる取引だからと説明しています。保護がないという意味ではありません。
貸金業法と銀行法の本則には、申込みの撤回の規定もありません。代わりに貸金業法は、契約前に内容を説明する書面(16条の2)と、契約後に内容を明らかにする書面(17条)の交付を義務付けています。書面には、貸付けの金額、利率、返済の方式、返済期間と回数、遅延損害金の定めが載ります。クーリング・オフがない分、契約前の書面で条件を確かめることが大切です。なお、信用金庫や労働金庫などが自ら行う貸付けが特定商取引法のどの規定で除外されるかは、今回確認できませんでした。公的機関が「ローンにはクーリング・オフがない」と明記した解説も見つからなかったため、ここでは条文の組み合わせで説明しています。
同じ「ローン」と呼ばれても、お金を借りる契約と、商品の代金を立て替えてもらう契約は法律上別のものです。割賦販売法2条4項は、カードを使わずに販売店の代金をクレジット会社が立て替え、購入者が後から支払う取引を「個別信用購入あっせん」と定めています。種類別に整理すると次のとおりです。
| 契約の種類 | 法定のクーリング・オフ | 根拠 |
|---|---|---|
| 銀行のカードローン・目的別ローン | なし | 特定商取引法26条1項8号ニ、施行令別表第二29号 |
| 消費者金融(登録貸金業者)からの借入れ | なし | 同法26条1項8号ニ、施行令別表第二30号 |
| 訪問販売・電話勧誘販売で結んだ個別クレジット | あり(8日) | 割賦販売法35条の3の10 |
| エステ・語学教室など特定継続的役務提供の個別クレジット | あり(8日) | 割賦販売法35条の3の11 |
| マルチ商法・内職商法の個別クレジット | あり(20日) | 割賦販売法35条の3の11 |
| 自分で店舗に出向いた契約・通信販売の個別クレジット | 35条の3の10の対象場面に当たらない | 同条1項各号 |
| 四輪自動車の訪問販売と、それに伴う個別クレジット | なし | 特定商取引法26条4項1号・施行令14条、割賦販売法35条の3の60第4項 |
| 借入れの債務を担保するための保険契約 | なし | 保険業法施行令45条7号 |
個別クレジットのクーリング・オフは、法定の書面を受け取った日から8日以内に、書面で通知します。割賦販売法35条の3の10は、通知を発した時に効力が生じるとし、クレジット契約を撤回すると販売契約も原則として撤回・解除されたものとみなすと定めています。クレジット会社は、販売店に代金を渡していても消費者に請求できず、受け取ったお金は返さなければなりません。国民生活センターは、販売会社とクレジット会社に同時に通知し、特定記録郵便や簡易書留など記録が残る方法で送るよう案内しています。特定商取引法は2022年6月から電子メールなどでの通知も認めましたが、割賦販売法の同条は「書面により」と書いているため、個別クレジット分は書面で送るのが確実です。
保険にも保険業法309条のクーリング・オフがありますが、施行令45条7号は、金銭消費貸借などの債務の履行を担保するための保険契約を除外しています。ローンと一緒に入る保険がこれに当たるかは、契約の形態によります。自分の契約がどれに当たるかは、契約書面の契約相手と、勧誘を受けた場所・方法で判断してください。
クーリング・オフがなくても、借入契約をやめる方法はあります。時点ごとの手段は次のとおりです。
| 時点 | 手段 | 公式の説明の例 |
|---|---|---|
| 申込み後・契約前 | 申込みのキャンセル・取下げ | アコムは電話で受付。みずほ銀行は住宅ローンの正式審査申込後でも取下げ可、auじぶん銀行は住宅ローンのキャンセル料なし |
| 勧誘を受けている段階 | 契約しない意思を伝える | 貸金業法16条4項により、貸金業者は勧誘を続けられない |
| 契約後・借入前(カードローン) | 解約の手続き | アコムは自動契約機か電話、アイフルはアプリ、みずほ銀行は電話か店舗 |
| 借入後 | 一括返済してから解約 | 三菱UFJ銀行は一括返済が可能で利息は日割、三井住友銀行は臨時返済がいつでも可能 |
| 不当な勧誘で契約した | 消費者契約法による取消し | 同法4条・7条(追認できる時から1年、契約から5年) |
注意したいのは、完済しても契約は終わらないことです。三井住友銀行と三菱UFJ銀行の公式コラムは、カードローンを完済しても自動的に契約が解消されるわけではなく、別に解約の手続きが必要だと説明しています。三井住友銀行のカードローンは1年ごとの自動更新です。みずほ銀行は、電話で解約する場合は先に残高を全額返すよう求めています。アイフルは、解約の完了までおおむね1週間かかるとし、解約証明書の郵送にも応じています。
勧誘に問題があった場合は、消費者契約法4条を使える可能性があるでしょう。重要事項について事実と違うことを告げられた、不利益な事実を故意か重大な過失で告げられなかった、帰りたいと言ったのに帰してもらえなかった、などで契約したときは取り消せます。同法5条は、事業者から媒介を頼まれた第三者の行為にも準用されます。取消権は、追認できる時から1年、契約から5年で消滅します。ローン契約への適用を明示した公的な解説は確認できなかったため、該当しそうなときは消費生活センターに相談してください。
借りた後にやめる場合は、借りた日数分の利息を払って返すことになります。各社が示す式は「借入金額×金利÷365日×借入日数」です。30万円を年14.5%で借りて10日後に返すと利息は1,191円、30日後なら3,575円です。年17.9%なら10日で1,471円になります。三菱UFJ銀行は、利息が日割計算のため一括返済に必要な金額は返済日で変わると説明しています。プロミスは、ATMでは1,000円単位の取引になり端数が残ることがあるため、事前に正確な返済額を確認するよう案内しています。
消費者金融の無利息サービスは、期間内に返せば利息がかからない仕組みです。ただし、これはクーリング・オフではなく、各社のサービスです。起算日も会社で違い、アコムは「ご契約日の翌日」から、プロミスは「初回お借入の翌日」から、それぞれ30日間としています。仮に契約の10日後に30万円を借り、契約から45日目に返すとします。契約日の翌日から数える場合は無利息期間が契約から30日目で終わるので、有利息の日数は15日、年17.9%で利息は2,206円です。借入日の翌日から数える場合は、無利息期間が契約から40日目まで続くので、有利息は5日で735円です。この比較は、日数の数え方を単純化した仮定の計算です。
銀行の目的別ローンや住宅ローンは、一括返済に手数料がかかることがあります。三井住友銀行の住宅ローンは、インターネットなら全額繰上返済も無料で、窓口や書面では33,000円です(2025年3月10日現在)。融資の実行後に「やっぱりやめる」と全額を返す場合も、この手数料と、それまでの利息がかかります。融資の実行前に取り下げるほうが負担は小さいので、迷っているなら実行日より前に申し出てください。審査の通過から融資の実行までの流れは、事前審査が通ったあとの流れの記事で確認できます。
借入契約は、契約してしまうと一方的にはやめられません。契約前に次の点を確かめてください。
国民生活センターは、販売業者から「借りればいい」と消費者金融での借金を勧められたり、年収や職業を偽るよう指示されたりする手口に注意を呼びかけています。そうした勧誘を受けたときや、クーリング・オフできる取引か分からないときは、消費者ホットライン188に電話してください。最寄りの消費生活センターなどにつながります。消費者金融との契約のトラブルは、日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センター(0570-051-051、平日9時〜17時)でも相談できます。
借入先を決める前に、複数の金融機関の条件を書面でそろえて比べておくと、契約後に「別のところにすればよかった」と悩むことを減らせます。金利だけでなく、繰上返済の手数料や解約の手続きも比べる項目に入れてください。
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調査日:2026年10月11日。法令は2026年10月11日時点の現行版です。特定商取引法、貸金業法、消費者契約法などには施行前の改正があり、施行後は内容が変わる場合があります。
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