2024年05月13日
療養型病院(医療療養病床)は、急性期を過ぎて症状が安定している患者さんが、長期療養の目的で入院できる病院です。病気を抱えていて一般的な介護施設の利用が難しい人も、医療ケアと療養生活の支援を受けながら安心して入院することができます。反面、療養型病院への入院は何カ月もの長期にわたることが多く、その費用に不安を抱く方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、療養型病院に入院する際の費用相場や、費用負担を軽減する制度についてご紹介します。療養施設や介護施設を検討中の方は、是非参考にしてください。
目次
療養型病院と同じ長期療養施設に、介護医療院という施設があり、2つの違いがわからず戸惑う方も多いと思います。介護医療院は、介護保険適用で生活支援に重きを置いているのに対し、療養型病院は、医療保険適用で医療ケアが中心の施設です。医師や看護師の常駐が定められており、介護施設では対応が難しい病気の人でも受け入れが可能です。
入院医療費、食費、住居費に医療保険が適用され、後ほど説明する医療区分、ADL区分という分類と所得によって自己負担額が算出されます。
以下の表は、おおよその1カ月分の自己負担額です。
医療区分1 | 医療区分2 | 医療区分3 | |
---|---|---|---|
入院医療費 | 24,450~29,040円 | 36,960円~42,420円 | 44,130円~54,390円 |
食費 | 9,000円~41,400円 ※所得により変動 | ||
居住費 | 0円~11,100円 ※所得により変動 | ||
その他自己負担費用 | 15,000円~50,000円 | ||
計 | 48,450~131,540円 | 60,960~144,920円 | 68,130~156,890円 |
療養型病院の入院費用を定める上で、医療区分とADL区分が大きく影響します。また医療区分は、希望した療養型病院に入院できるかどうかにも関わります。
では、それぞれの区分の意味を見てみましょう。
患者の医療ケアの必要度を計るため、厚生労働省が疾患や患者の状態、医療処置等を3段階に分類したものが医療区分です。区分の数字が大きい方が、より医療の必要度が高くなります。
疾患・状態 | 医療処置 | |
---|---|---|
医療区分3 | ・スモン ・医師及び看護師により、常時監視・管理を実施している状態 | ・24時間持続点滴 ・中心静脈栄養 ・人工呼吸器使用 ・ドレーン法 ・胸腹腔洗浄 ・発熱を伴う場合の気管切開、気管内挿管 ・感染隔離室における管理 ・酸素療法(酸素を必要とする状態かを毎月確認) |
医療区分2 | ・筋ジストロフィー ・多発性硬化症 ・筋萎縮性側索硬化症 ・パーキンソン病関連疾患 ・その他の難病(スモンを除く) ・脊髄損傷(頸髄損傷) ・慢性閉塞性肺疾(COPD) ・疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍 ・肺炎 ・尿路感染症 ・リハビリテーションが必要な疾患が発症してから30日以内 ・脱水かつ発熱を伴う状態 ・体内出血 ・頻回の嘔吐かつ発熱を伴う状態 ・褥瘡 ・末梢循環障害による下肢末端開放創 ・せん妄 ・うつ状態 ・暴行が毎日みられる状態(原因、治療方針を医師を含め検討) | ・透析 ・発熱又は嘔吐を伴う場合の経腸栄養 ・喀痰吸引(1日8回以上) ・気管切開 ・気管内挿管のケア ・頻回の血糖検査 ・創傷(皮膚潰瘍 、手術創 、創傷処置) |
医療区分1 | 医療区分2・3に該当しない者 |
療養型病院は、慢性期(病状は比較的安定しているが、長期的な看護、治療が必要な状態)の患者が対象の病院であり、より医療的ケアが必要な医療区分2、3の人が優先的に入院できます。医療区分1の人は療養型病院への入院が難しい状況ですが、介護医療院への入院は可能です。
ADLとは「Activities of Daily Living」の略称で、日常生活を送る上で最低限必要な動作を、患者自身でどの程度まで行えるかを判断する指標です。
入院時や月初めなど、決まったタイミングで「評価の内容」*1を元に「ADL区分評価表」*2の項目ごとに点数をつけ、その合計点で「評価の結果」*3どおりに区分されます。
具体的には、ベッドでの起き上がりや寝返り、食事やトイレの動作などが確認されます。
入院費用の中には、入院医療費や食費、居住費に加え、介護用おむつ代やテレビ利用料、個室を利用するのであれば個室代などがかかります。入院医療費、食費、居住費は医療保険が適用されますが、その他の費用は全額自己負担となります。
では、それぞれのおおよその費用を見ていきましょう。
入院費は、医療区分とADL区分の組み合わせで費用が決まります。つまり、医療ケアの必要度と、日常生活の中でどれだけ介助が必要になるかによって費用が異なるということです。
以下の表は、療養型病院の入院医療費(自己負担分)の1日あたりの金額です。
この他に、認知症ケアやリハビリなどのサービスを受けた場合は、それらの自己負担分が加算されます。
※1日あたりの費用
区分 | 医療区分1 | 医療区分2 | 医療区分3 |
---|---|---|---|
ADL区分1 | 815円 | 1,232円 | 1,471円 |
ADL区分2 | 920円 | 1,386円 | 1,758円 |
ADL区分3 | 968円 | 1,414円 | 1,813円 |
入院時の食費は、健康保険被保険者、被扶養者共に1食につき460円を負担することになっています。これを標準負担額といいます。460円という金額は、平均的な家計における食費をもとに厚生労働大臣が定めた金額です。住民税非課税世帯の場合や指定難病患者は負担が軽減されます。
※1食あたりの費用
区分 | 医療区分1 | 医療区分2・3 | 難病指定 |
---|---|---|---|
課税世帯 | 460円 | 460円 | 260円 |
低所得者2 | 210円 | ||
160円(過去12ヶ月の入院日数が90日を超える場合) | |||
低所得者1 | 100円または130円 |
65歳以上の人が療養型病院に入院する場合、区分や世帯所得に関係なく、居住費として1日につき370円が自己負担となります。但し指定難病患者は負担が軽減されます。65歳未満の方は居住費の負担はありません。
療養型病院では、食費と居住費を合算したものが「生活療養標準負担額」として自己負担費用になります。「生活療養標準負担額」とは、生活療養にかかる平均的な費用額や、平均的な家計における食費及び光熱水費の状況等を勘案して厚生労働大臣が定めた金額です。
区分 | 医療区分1 | 医療区分2・3 | 難病指定 |
---|---|---|---|
課税世帯 | 370円 | 370円 | 0円 |
低所得者2 | 370円 | ||
低所得者1 | 370円 |
入院時は、医療費や生活費の他にも様々な費用がかかります。日々使用するおむつ代や、テレビを楽しみたい人はテレビ使用料、個室を希望する場合は個室代などが自己負担となります。
療養型病院の入院費用は、病状や介護の必要度合いによっては月々の負担額が高額になってしまうことがあります。また、長期入院になることで支払いが苦しくなることもあるでしょう。そんな時は、これから紹介する様々な医療費助成制度を検討してみてください。
高額療養費制度とは、1カ月にかかった医療費の自己負担額が、年齢や所得によって定められた自己負担限度額を超えた場合、その超えた分の費用が後日払い戻される制度です。
自己負担額は、同一世帯の複数人の医療費、1人が複数の医療機関で受診した費用、入院や外来などの費用、処方せんを元に調剤薬局で購入した薬代などを全て合算することができます。しかし、生活療養標準負担額、差額ベッド代、先進医療などの医療保険対象外の治療費用、その他の雑費などは合算できません。
70歳以上の人は負担した費用全てを合算することができますが、70歳未満の人は、医療機関ごとに合算した金額が21,000円以上の費用のみが対象となります。調剤薬局で支払った薬代は、処方せんを交付した医療機関の負担額として合算することができます。
以下は年齢、収入ごとの負担限度額です。
ひと月の上限額(世帯ごと) | |
---|---|
【現役並み所得者3】 年収約1,160万円~ 標準報酬月額83万円以上 課税所得690万円以上 | 252,600円+(医療費ー842,000円)×1% |
【現役並み所得者2】 年収約770万円~約1,160万円 標準報酬月額53万円~79万円 課税所得380万円~690万円 | 167,400円+(医療費ー558,000円)×1% |
【現役並み所得者1】 年収約370万円~約770万円 標準報酬月額28万円~50万円 課税所得145万円~380万円 | 80,100円+(医療費ー267,000円)×1% |
【一般所得】 年収156万円~約370万円 標準報酬月額26万円以下 課税所得145万円未満等 | 57,600円 |
【住民税非課税世帯】 | 35,400円 |
ひと月の上限額(世帯ごと) | 外来(個人ごと) | |
---|---|---|
【現役並み所得者3】 年収約1,160万円~ 標準報酬月額83万円以上 課税所得690万円以上 | 252,600円+(医療費ー842,000円)×1% | ― |
【現役並み所得者2】 年収約770万円~約1,160万円 標準報酬月額53万円~79万円 課税所得380万円~690万円 | 167,400円+(医療費ー558,000円)×1% | ― |
【現役並み所得者1】 年収約370万円~約770万円 標準報酬月額28万円~50万円 課税所得145万円~380万円 | 80,100円+(医療費ー267,000円)×1% | ― |
【一般所得】 年収156万円~約370万円 標準報酬月額26万円以下 課税所得145万円未満等 | 57,600円 | 18,000円 [年144,000円] |
【住民税非課税世帯】 | 24,600円 | 8,000円 |
【住民税非課税世帯】 年金収入80万円以下など | 15,000円 | 8,000円 |
ひと月の上限額(世帯ごと) | 外来(個人ごと) | |
---|---|---|
【現役並み所得者3】 年収約1,160万円~ 標準報酬月額83万円以上 課税所得690万円以上 | 252,600円+(10割分の医療費-842,000円)×1% 多数回:140,100円 | |
【現役並み所得者2】 年収約770万円~約1,160万円 標準報酬月額53万円~79万円 課税所得380万円~690万円 | 167,400円+(10割分の医療費-558,000円)×1% 多数回:93,000円 | |
【現役並み所得者1】 年収約370万円~約770万円 標準報酬月額28万円~50万円 課税所得145万円~380万円 | 80,100円+(10割分の医療費-267,000円)×1% 多数回:44,400円 | |
【一般2】 課税所得28万円以上で次のいずれか ・1人世帯:年金収入+その他合計所得金額が200万円以上 ・2人以上世帯:年金収入+その他合計所得金額が320万円以上 | 57,600円 多数回:44,400円 | 6,000円+(10割分の医療費-30,000円)×10% または18,000円のいずれか低い方 (年間上限144,000円) |
【一般1】 上記3区分以外の課税者 | 18,000円 (年間上限144,000円) | |
【低所得2】 世帯全員が住民税非課税 年収約80万円超 | 24,600円 | 8,000円 |
【低所得1】 世帯全員が住民税非課税 年収約80万円以下 | 15,000円 | 8,000円 |
高額療養費制度は、一度支払った費用が後日返金される仕組みですが、返金までは日数がかかります。入院費全額を用意できない場合は、事前に申請して「限度額適用認定証」を発行してもらうことで、病院への支払いを限度額までとすることができます。また、マイナ保険証を利用している人は、保険証を提示して限度額情報の表示に同意することで、窓口での支払いが限度額までとなりますので、「限度額適用認定証」の発行は不要です。
※75歳以上の人は、後期高齢者医療保険が適用されるため、通常の国民健康保険とは異なり、「限度額適用認定証」が発行可能なのは住民税課税所得がいずれも690万円未満の人に限ります。
高額療養費制度は、申請してから支給されるまでに3カ月ほどかかります。そこで、病院に支払う費用が用意できない場合、高額療養費で支給される予定の金額の8~9割相当額を、無利子で借りることができるのが高額療養貸付制度です。
手続き方法は、各保険組合によって異なりますので、自身が加入している保険組合に問い合わせてみましょう。
高額療養費受領委任払制度は、高額療養費制度の限度額適用認定証と似た仕組みで、事前に申請し、医療機関との受領委任契約を行うことで、高額療養費該当分を、医療保険から医療機関へ直接支払ってくれる仕組みです。
利用者は、医療費が高額なため生活を維持しつつ医療機関へ医療費を支払うことが困難な人に限られています。この制度が利用できる公的医療保険は限られていますので、利用したい場合は、自身が加入している保険組合に事前に確認しておきましょう。
長い療養生活で、資金繰りに困ってしまうこともあると思います。そんな時は、返済可能な範囲内で計画的にローンを活用するという方法もあります。
「生活福祉資金制度」は、無利子で借りることができる公的融資制度です。低所得世帯や障害者世帯、65歳以上の療養または介護が必要な高齢者が属する世帯が対象で、民間の金融機関からの借入が可能だと判断された場合、または返済能力が無いと判断された場合は借りることができません。まずは各市区町村の自立相談支援機関窓口に相談してください。
また、「生活福祉資金制度」と似た制度で「緊急小口資金」があります。緊急で資金が必要な際に、10万円以内の貸付を行ってくれます。対象世帯は「生活福祉資金制度」と同様で、無利子で借り入れることができます。
その他、民間の金融機関では医療ローンやカードローン、フリーローンなどが、入院費用として借り入れることができます。医療ローンは、用途を医療に限った目的ローンなので、審査は厳しくなりますが、カードローンやフリーローンと比較して低金利で借り入れることができます。
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