私立中学の併願では、入学金を払ったあとに辞退したとき、お金が戻るかどうかは学校ごとに違います。全国で共通のルールはありません。延納(入学金の納付を後ろへずらす制度)がある学校もあれば、入学手続時の納入金を一切返さないと明記している学校もあります。この記事では、実在校の募集要項を並べて違いを確認し、併願で先に出ていく現金の見積もり方と、現金を確保する手順を整理します。
この記事は2026年10月7日に確認した資料にもとづきます。読者の多くが受験するのは2027年2月の入試ですが、私立中学の令和9年度(2027年度)の要項は学校ごとに公表時期が違います。ここでは令和9年度と明記したものを除き2026年度入試の要項を例にしています。実際の期限と金額は、志望校の最新の要項で確認してください。なお、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」は、中学校の入学金・授業料には使えません。
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併願で現金が必要になるのは、第一志望の結果が出る前に、ほかの学校の入学手続の期限が来るからです。2026年度入試の例では、桜蔭中学校が合格発表の翌日の2月3日13時までに、芝中学校の第1回が2月3日12時までに入学金を納めるよう求めています。一方、東京都教育委員会が公表した令和9年度の都立中学校(一般枠)は、検査が2027年2月3日、合格発表が2月9日です。令和8年度も同じ日付(2月3日検査、2月9日発表)でした。
私立の入学金の期限が2月上旬、都立の合格発表が2月9日だと、結果を待たずに私立の入学金を払うかどうかを決めなければならない期間ができます。公立中高一貫校を受ける場合に限らず、第一志望の発表が手続期限より後になる受験なら、同じ状況が起きます。私立中学の令和9年度入試の日程は、確認した時点で都の私立中学校入学者選抜実施要項(令和9年度版)が見当たらなかったため、2026年度の東京では2月1日以降に選抜が行われた、という事実にとどめます。
同じ「入学手続」でも、学校によって扱いはかなり違います。確認できた5校の要項を並べました。要項に記載がない項目は「記載なし」と書いており、制度がないと断定するものではありません。
| 学校(要項の年度) | 入学時に払う額と期限 | 延納 | 辞退したときの扱い |
|---|---|---|---|
| 桜蔭中学校(2026年度) | 入学金380,000円。2月3日13時までに入学金決済サイトで納付 | 記載なし | 「納入金はいっさいお返しいたしません」 |
| 芝中学校(2026年度) | 入学金300,000円。第1回は2月3日12時まで、第2回は2月6日12時まで。クレジットカードのみで事務手数料は別途 | 記載なし | 「受験料・入学金は、いかなる事由があってもお返しいたしません」。辞退の手続は志願者サイトの案内に従う |
| 昭和学院秀英中学校(2026年度) | 入学時納入金300,000円(入学金150,000円+入学時施設費150,000円) | あり。延納金100,000円を1月22日16時または25日14時まで(入試回による)に納め、残金200,000円を2月5日12時までに納める | 入学時納入金とその一部(延納金)は返還しない |
| 浦和実業学園中学校(2025年度・令和8年度) | 入学金230,000円+施設設備費40,000円で270,000円。手続は合格発表日から2月10日までの平日 | なし(延納手続・延納金はない) | 入学金以外は一定期間後に返還する |
| 報徳学園中学校(令和9年度) | 入学手続時納付金は合計801,000円。入学金200,000円を第1回、残りを第2回の手続で納める | 記載なし(2回に分けて納付) | 入学手続時納付金は、手続き後に辞退しても返還しない |
この表から分かることは3つあります。1つ目は、返還の有無が学校ごとにまったく違うことです。桜蔭・芝・昭和学院秀英・報徳学園は返還しないとし、浦和実業学園は入学金以外を返すとしています。2つ目は、延納があっても延納金は返らないことです。昭和学院秀英は延納金100,000円も返還しないと明記しています。3つ目は、納付の方法も学校ごとに違うことです。芝のようにクレジットカードのみの学校では、カードの利用限度額が足りなければ入学金を決済できません。入学金と受験料を別の学校分まで含めて決済する場合は、利用枠を事前に確認しておく必要があります。
入学金や授業料の返還については、最高裁判所が平成18年11月27日に判決を出しています。裁判所のサイトで確認した要旨では、大学の入学試験に合格した人が納める入学金は「入学し得る地位を取得するための対価」で、特段の事情がない限り、解約しても大学は返還義務を負わないとされました。一方、授業料などを返さない特約は、入学年度の前日である3月31日までに解除した場合には、原則として消費者契約法9条1号により無効となるとされています。
ただし、これは大学の在学契約についての判断です。判決は、国公立大学の後期日程の発表が3月下旬に行われるといった大学入試の実情を前提にしています。中学校の入試は2月に集中しており、日程の事情が違います。私立中学の入学金や授業料の返還に同じ結論が当てはまるかどうかは、この記事では断定できません。実際の手がかりは、各校の募集要項や入学手続書類に書かれた条件です。返還について疑問があるときは、手続前に学校へ書面などで確認し、必要に応じて専門家や消費生活の相談窓口に相談してください。
併願で先に出ていく現金は、期限が先に来る学校の入学金の合計です。次は、説明用の仮定の試算です。A校の入学時納入金が300,000円、B校の入学金が250,000円で、どちらも都立中の発表日(2月9日)より前に手続期限が来るとします。A校に延納がある場合は、昭和学院秀英と同じ形(延納金100,000円、残金200,000円)を当てはめます。
| ケース | 2月上旬に出ていく額 | 第一志望に進学し両校を辞退した場合の戻り方 |
|---|---|---|
| A校・B校とも通常の納付(返還なしと仮定) | 550,000円(300,000円+250,000円) | 戻らない前提で550,000円 |
| A校は延納(延納金100,000円)、B校は通常納付 | 350,000円(100,000円+250,000円)。差は200,000円 | 延納金も返還されない前提で350,000円 |
| 浦和実業学園の条件を1校分当てはめる | 270,000円 | 施設設備費40,000円は一定期間後に返還。実質230,000円(入学金のみ) |
延納を使うと、先に出す現金を減らせます。ただし、延納金は返らないため、延納は「払うタイミングをずらす」制度であって、損失をなくす制度ではありません。併願校の入学金の「最大の先払い額」と「辞退したときに戻らない金額」を、別々の数字として把握しておきましょう。
秋のうちにやっておくと、2月の判断に落ち着いて臨めます。
自己資金で足りるなら、いちばん単純です。足りない分は、学校の延納制度、銀行の教育ローンなどで補えるかを調べます。
最初に確認したいのは、国の教育ローンは中学校の入学金には使えないことです。日本政策金融公庫のご利用条件には、対象の学校が「中学校卒業以上の方を対象とする学校」とあり、お使いみちの欄に「義務教育期間中の費用は対象とはなりません」と書かれています。公庫のよくある質問には、すべりどめ校の入学金や受験費用も融資の対象になるとありますが、これは高校以上の話です。金利は年4.05%の固定(令和8年7月1日現在)ですが、中学校の費用には適用できません。
銀行の教育ローンは商品ごとに対象が違います。2026年10月7日に公式ページを確認した範囲では、ドコモSMTBネット銀行の教育ローンは、私立中学・高校の学費・入学金を使いみちとして挙げています。仮審査の申込時点で支払後3か月以内の費用も対象で、入学金を先に払ったあとでも申し込めます。金利は変動で、借入額の2%に消費税を加えた事務手数料がかかります。たとえば30万円を借りると、事務手数料は6,000円で、消費税率を10%と仮定すると6,600円です。入学金を一時的に立て替える短期の借入では、この手数料が割高に感じられる場合もあるため、借りる期間と金額を合わせて検討してください。適用金利や借入の可否は審査の結果で変わります。金利の数字は、確認した画面に日付が表示されていなかったため、この記事には載せません。
三井住友銀行の教育ローンは、対象の学校として大学・大学院・短大・高校・高専・塾・専門学校・各種学校・予備校等を挙げており、中学校の記載がありません。使えるかどうかは、申込前に確認が必要です。どの金融機関でも、年齢、収入、返済期間などの条件と、お金が入る時期が入学金の期限に間に合うかを、早めに確かめておくことが大切です。
併願校の入学金は、返還の有無も、延納の有無も、決済方法も、学校ごとに違います。判例は大学の事案で、中学校にそのまま当てはめることはできません。秋のうちに各校の手続期限と辞退時の扱いを一覧にし、期限が先に来る入学金の合計と、戻らない可能性のある金額を数字で確認してください。国の教育ローンは中学校の費用には使えないため、自己資金、学校の延納、民間の教育ローンのどれで備えるかを、早めに決めておくと安心です。
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※本文の試算は、募集要項の条件を使った仮定の概算です。特定の学校の返還条件や、融資の可否・金利を保証するものではありません。
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