2022年12月21日
歯科矯正やインプラントなどの高額な治療を受けたら、医療費控除することで医療費の一部が戻ってくる可能性があります。さらにデンタルローンを使うと、院内分割より還付金の額が多くなる場合もあります。今回は医療費控除の対象となる治療やデンタルローンと院内分割の違いを解説するほか、医療費控除でいくら戻るかもシミュレーション。低金利なローンを探せるおすすめのサービスも紹介します。
目次
医療費控除は、医療費が家計に与える負担を軽くするための制度で、1年間で支払った医療費が一定額を超えた場合に手続きすることで「所得控除」を受けられます。
所得控除とは、納税額を決めるための基準となる金額(課税所得)から一定額を差し引く仕組みです。医療費控除をすると医療費の額に応じて課税所得を減らせるため、払いすぎた分の税金が戻ってきます。
医療費控除の対象となるのは「その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費」で、保険金や高額療養費などで補填される分は差し引きます。この合計金額から10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を引いた額が「医療費控除額」で、課税所得から最大200万円まで差し引くことができます。
本人だけでなく、同一生計の親族の医療費も医療費控除の対象です。生計が同じであれば同居・別居は問わないため、仕送りで生活している子どもや親、単身赴任中の配偶者などの医療費も合算できます。
医療費が一定額を超えても、自動的に医療費控除はおこなわれません。医療費控除を受けるには、年末調整済みの会社員なども確定申告する必要があります。
確定申告とは1年間に発生した所得とそれに対する税金の額を計算して確定させる手続きで、原則翌年の2月16日~3月15日の間に税務署に書類を提出します。
歯科医院では、虫歯治療のような機能を改善するための治療のほかに、見た目を良くするための審美治療もおこなわれます。見た目を良くするための治療は医療費控除の対象外となるため、歯科治療費だからといって医療費控除できるとは限りません。
それでは、医療費控除の対象になるものとならないものについて具体的に見ていきましょう。
国税庁のホームページによると、医療費控除の対象となる歯科治療は次の通りです。
歯科医師による診療または治療の対価で、その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額は、医療費控除の対象となる医療費に該当します。
保険診療、自費診療どちらも対象で、具体的には次のような治療があります。
インプラントは、失った歯の機能を補うための治療は対象ですが、見た目を良くするためにおこなった場合は対象外です。
子どもの歯科矯正は「適切な成長をするための必要な治療行為」とされるため、医療費控除の対象です。具体的な年齢の基準は設けられていませんが、一般的には中学生くらいまでが対象とされています。
一方、大人の歯科矯正は「噛み合わせなどの機能回復のために歯列矯正が必要」と歯科医が判断した場合のみ対象です。診断書はなくても確定申告できますが、後日税務署から提出を求められることがあります。
病気の予防や美容が目的の場合は、医療費控除の対象になりません。 対象外となる歯科治療には次のようなものがあります。
歯科医院でおこなわれる治療には、このほかにも医療費控除の対象なのか判断しにくいものがあります。不明な場合は治療を受ける前に歯科医に確認しましょう。
直接的な治療費のほかに、治療を受けるために必要な費用も医療費控除の対象となる場合があります。歯科治療にまつわる費用について、対象になるものとならないものを確認しておきましょう。
医療費控除の対象になるもの | 医療費控除の対象にならないもの |
治療のための通院費(電車やバスの運賃) 虫歯や歯周病の治療で歯科医が必要と判断した歯ブラシ・歯みがき粉 | 通院のためのマイカーのガソリン代、駐車場代 予防のために購入した歯ブラシ・歯みがき粉 |
通院に公共交通機関を利用した場合は、通院費も医療費控除の対象となります。子どもなど通院に付添が必要であれば、付添人の交通費も対象です。マイカーのガソリン代、駐車場代は対象外で、タクシーは電車が動いていない深夜の救急や歩行が困難な高齢者など、やむを得ない場合のみ対象です。なお、電車など領収書が出ない場合は、日付と金額、目的をメモに残しておきましょう。
日常的に使用する歯ブラシや歯みがき粉などは「予防歯科」に該当するため、控除の対象にはなりません。ただし、治療のために担当医から特定の商品を購入するよう指示された場合は「治療のための歯ブラシ購入」などと認められ、控除の対象になります。
デンタルローンは使い道を歯科治療に限定したローンで、利用目的が限られる分カードローンなどに比べて金利は低めです。歯科医院で申し込める信販会社のデンタルローンのほかに、銀行が取り扱っている場合もあります。
医療費控除の対象の治療であれば、デンタルローンを利用しても控除を受けられます。金融機関が歯科医院に立替払した時点で医療費を支払ったとみなされるため、数年かけてローンを返済する場合でも1年の医療費として申告できます。なお、ローンの利息については医療費控除の対象外です。
給与所得者が医療費控除を受けるには、次の書類を用意します。
準備する書類
作成する書類
デンタルローンを利用した場合は領収証がないため、デンタルローン契約書の写しを利用します。領収書から「医療費控除の明細書」を作成したら、「確定申告書」に添付して税務署に提出します。領収書の提出は不要ですが、記載内容の確認を求められることもあるため5年間保管が必要です。
医療費控除の明細書や確定申告書は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で作成できます。
詳しくはこちらでご確認ください。
国税庁 確定申告書等作成コーナー
国税庁 医療費を支払ったとき(医療費控除)
医療費控除は、税金そのものを減らす「税額控除」ではなく課税対象になる所得金額を減らす「所得控除」のため、申告する人の所得で戻ってくる金額が変わります。また、翌年の住民税も安くなるので合わせて見ていきましょう。
課税される所得金額 | 税率 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% |
40,000,000円 以上 | 45% |
所得税は課税額が高いほど適用される税率が上がる「累進課税」という方式を取っています。所得とは収入から必要経費(給与所得者の場合は給与所得控除額や社会保険料など)を引いた金額で、この金額に応じて上の表の税率が適用されます。
確定申告で戻ってくる金額は、医療費控除額に所得税率をかけて算出します。所得税率が高いほど戻ってくる額が大きくなるため、家族の中で最も収入の多い(所得税率の高い)人が医療費控除すると良いでしょう。なお、還付金は確定申告してから1~1.5ヵ月後に、確定申告書に記入した口座に振り込まれます。
住民税の金額は前年の1月から12月までの所得をもとに決定し、6月から翌年5月の間に徴収されます。つまり、医療費控除をおこなうと医療費を支払った翌年6月以降の住民税が安くなります。
住民税の税率は所得に関わらず10%(都道府県民税・市区町村民税の合計)なので、住民税がいくら安くなるかは医療費控除額に10%をかければ算出できます。
それでは、いくら戻ってくるのか次の式を使って計算してみましょう。
例えば、課税所得300万円の人が30万円の医療費を払った場合でシミュレーションしてみます。課税所得300万円の所得税率は10%なので、戻ってくる所得税と住民税はそれぞれ次の通りです。
このケースでは、医療費控除することで合計4万円も節税できます。節税効果は、医療費額、所得税率ともに高いほど大きくなります。医療費が高額になった場合は忘れずに医療費控除をおこないましょう。
歯科医院で申し込める分割払いには、デンタルローンのほかに「院内分割」があります。この2つの違いや医療費控除で戻ってくる金額の違いなどを比較してみましょう。
デンタルローン | 院内分割 | |
金利 | 2.5~8%程度 | 無利子の場合が多い |
返済期間 | 最長7~15年程度 | 治療期間内に返済 |
審査 | 必要 | 不要の場合が多い |
院内分割とは歯科医院が独自に提供する分割払いの制度です。このため、院内分割を扱っている歯科医院でしか利用できません。分割回数などの条件は歯科医院ごとに異なりますが、基本的に治療期間内に全額支払う必要があります。
院内分割は金利がかからない場合が多いため、一般的にはデンタルローンよりお得と思われがちです。しかし、医療費控除するならデンタルローンの方がお得な場合もあるため、利用前に試算してみましょう。
今回は、30万円を24回払いにした場合で試算します。なお、デンタルローンの金利は一般的な提携デンタルローン金利(5%)で計算しています。
デンタルローン | 院内分割 | |
金利 | 5% | 0% |
分割回数 | 24回 | 24回 |
毎月の返済額 | 13,161円 | 12,500円 |
年間の返済額 | 157,932円 | 150,000円 |
返済総額 | 315,864円 | 300,000円 |
次に、それぞれの医療費控除で戻ってくる金額を計算します。今回は次の条件で算出しました。
所得税率:10%
該当する歯科治療以外の医療費はないこととする
院内分割は1月から翌年12月までの24回払いとする
デンタルローン | 院内分割 | |
1年目 | 40,000円 | 10,000円 |
2年目 | 0円 | 10,000円 |
デンタルローンは全額が契約した年の医療費になります。一方、院内分割は支払った年の医療費になるため、2年に分かれてしまいます。このため、節税効果はデンタルローンの方が高くなります。
最後に、返済総額から節税額を引いて実質負担額を比較してみましょう。
デンタルローン | 院内分割 | |
返済総額 | 315,864円 | 300,000円 |
節税額 | 40,000円 | 20,000円 |
実質負担額 | 275,864円 | 280,000円 |
このように、デンタルローンを利用した方が実質負担額を減らせる場合もあります。なお、治療費用や金利、支払回数に加えてほかの医療費の額によってもどちらがお得かは変わります。デンタルローンと院内分割で迷ったときは、シミュレーションしてみましょう。
より低金利のデンタルローンを利用すれば、さらに歯科治療費の負担を軽減できます。複数のプランを比較して、より低金利のローンを選びましょう。
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デンタルローンを利用すると、全額を同じ年の医療費にできます。ほかの分割方法より費用を抑えられる場合もあるため、手数料と節税額を比較してお得な支払方法を選びましょう。
医療費控除を受けるには確定申告が必要です。歯科治療費などの医療費が基準を超えたら、忘れずに申告して家計の負担を減らしましょう。
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歯科治療にかかる高額な費用を支払った際には、医療費控除を活用することで一部が戻ってくる可能性があります。この制度は、一定額を超えた医療費に対して所得控除を受けられるもので、確定申告をすることで適用されます。家族の医療費も含めて控除の対象になり、治療費の一部や通院にかかる費用なども考慮されます。また、デンタルローンを利用する場合も医療費控除を受けられるため、返済額に応じて控除額が変動します。デンタルローンと院内分割を比較する際には、金利や返済期間などを考慮し、医療費控除の節税額も加味して最適な選択をすることが重要です。医療費控除を活用して、歯科治療費の負担を軽減しましょう。