相続した実家の空き家に使える3,000万円の特別控除は、2027年12月31日までの譲渡が対象です。あわせて、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があり、早く来るほうが期限になります。家は1981年5月31日以前に建てられたものに限られます。2024年1月1日以後の譲渡では、買主が譲渡の翌年2月15日までに取壊す売り方も対象に加わりました。そのため、売主が解体費を先に払うとは限りません。要件を満たせば適用できる場合がありますが、最終的な判断は税務署が行います。
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国税庁は、この特例の対象を「平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って」一定の要件に当てはまる場合としています。令和9年は2027年です。国土交通省も、2023年12月31日までだった適用期間が2027年12月31日まで延長されたと説明しています。
もう1つの期限は、相続の時期で決まります。国税庁の要件は「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」です。国土交通省の資料は、譲渡日が2つの期限を「共に満たすことが必要」と書いています。たとえば2026年に相続が始まった場合、3年の期限は2029年の年末です。それでも制度の期限が2027年末なので、現行制度のままなら2027年中に売る必要があります。
国税庁は、資産を譲渡した日を原則として買主に引き渡した日としています。売買契約の効力発生の日を譲渡の日として申告する方法も認められており、この日は一般的には契約締結の日です。年末近くに契約して翌年に引き渡す場合は、どちらの日で判定するかで期限に入るかどうかが変わります。2027年末の直前に契約する場合は、契約前に税務署か税理士に判定方法を確認してください。
適用期限は税制改正で変わることがあります。この記事は2026年10月15日時点の制度に基づいています。延長されると決めつけずに、2027年中の引渡しを前提に計画を立てるのが安全です。
対象になる家は、相続開始の直前に亡くなった方が住んでいた家屋です。国税庁が求める要件は3つで、すべてを満たす必要があります。1つ目は1981年5月31日以前の建築であること、2つ目は区分所有建物の登記がないことです。3つ目は、相続開始の直前に亡くなった方以外の居住者がいなかったことです。区分所有建物の登記がされたマンションの部屋などは対象外です。親と同居していた家族がいた場合も要件から外れます。
亡くなった方が老人ホームなどに入所していた場合でも、一定の要件を満たせば対象になります。国税庁のNo.3307は、要介護認定や要支援認定を受けて有料老人ホームや特別養護老人ホームなどに入所した場合を挙げています。入所後も家が物品の保管などに使われ、貸付けや他人の居住に使われていないことが条件です。国土交通省は、家財道具の保管場所として使っていた場合も「一定使用」に当たるとしています。親族の家や一般の賃貸住宅に移って亡くなった場合は、この特例を受けられません。
売るのは、相続や遺贈で家と敷地を取得した相続人です。相続から売るまでの間、家と敷地を事業や貸付け、居住に使っていないことが必要です。売却代金は1億円以下でなければなりません。親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売った場合も対象外です。相続財産を譲渡した場合の取得費の特例など、他の特例と重ねて使うこともできません。
控除額の上限は原則3,000万円です。ただし、2024年1月1日以後の譲渡で、家と敷地を相続した相続人が3人以上いる場合は2,000万円までになります。兄弟3人で実家を相続したときは、上限が3,000万円にならない点に注意してください。
古い家を売る方法は、国税庁の要件では3つに分かれます。1つ目は、耐震基準を満たした家を売る方法です。耐震性がない家は、売る前に耐震改修をする必要があります。2つ目は、家を全部取壊してから土地を売る方法です。3つ目は、家を現況のまま売り、譲渡の翌年2月15日までに耐震改修か取壊しをする方法で、2024年1月1日以後の譲渡に限られます。この記事では、解体を伴う2つ目と3つ目を比べます。
表:解体を伴う2つの売り方の比較(2024年1月1日以後の譲渡)
| 項目 | 売主が解体してから売る | 現況のまま売り、買主が取壊す |
|---|---|---|
| 解体費を払う人 | 売主 | 買主(契約の特約で定める) |
| 解体費の支払時期 | 代金の入金より前になりやすい | 売主の支払いはない |
| 取壊しの期限 | 譲渡の時まで | 譲渡の日の属する年の翌年2月15日まで |
| 売主の譲渡費用 | 取壊し費用を含められる | 解体費は含まれない |
| 売主が頼る相手 | 解体業者 | 買主(工事と書類の提出) |
出典:国税庁 No.3306、国税庁 No.3255、国土交通省(2026年10月15日確認)
この売り方では、売主が解体業者と契約し、家を取壊してから土地を売る流れです。国税庁は、建物を取壊して土地を売るときの取壊し費用を譲渡費用に挙げています。そのため、解体費は譲渡所得の計算で差し引けます。ただし、工事を売る前に終えるため、解体費の支払いが代金の入金より先になりやすい売り方です。手元資金が足りないと立替えが必要になります。更地にした後は、売るまで土地を建物や構築物の敷地に使わないことも要件です。
売主は家が建ったまま引き渡し、買主が翌年2月15日までに取壊します。売主にとっては、解体費を立て替えずに済む点が利点です。その代わり、特例を使えるかどうかが買主の工事に左右されます。国土交通省は、拡充された要件を満たすには「譲渡後の買主の協力が不可欠」としています。市区町村の確認書でも、特例に関する特約が確認事項になっています。
国土交通省は、売買契約に入れる特約の例も公開しています。例では、買主が自分の責任と負担で期日までに工事を終え、必要書類を売主に渡すと定めます。買主の都合で売主が特例を受けられなかった場合は、控除相当額の損害賠償を請求できるとしています。仲介会社と契約書を作るときは、この例を示して特約の文言を相談してください。
2つの売り方では、お金が出ていく時期と入ってくる時期が違います。次の表は、2027年中に引き渡す場合の流れです。日付は国税庁の期限に当てはめた例で、実際の工事日や入金日は契約で決まります。
表:2027年中に引き渡す場合の資金と手続きの流れ(例)
| 時期 | 売主が解体してから売る | 現況のまま売り、買主が取壊す |
|---|---|---|
| 売買契約の前 | 解体工事の契約と解体費の支払い | 買主と特約の内容を詰める |
| 引渡し(2027年12月31日まで) | 土地の売買代金が入金 | 家と土地の売買代金が入金 |
| 2028年2月15日まで | 確認書の申請を進める | 買主が取壊しを終え、証明書類を売主へ渡す |
| 2028年2月16日から3月15日 | 確定申告 | 確認書を受け取り、確定申告 |
| 2028年3月15日 | 確定申告と所得税の納付の期限 | 確定申告と所得税の納付の期限 |
出典:国税庁 No.3102、国税庁 No.2020、国税庁 No.3306(2026年10月15日確認)/日付の当てはめは筆者
買主が取壊す場合は、申告までの日程が短くなりやすい点に注意してください。取壊しが2月15日ぎりぎりになると、確定申告の期限である3月15日まで約1か月しかありません。その間に、市区町村へ「被相続人居住用家屋等確認書」を申請します。千葉市の案内では、確認書の発行に申請から2週間程度かかります。取壊しの完了日を早めに決めておくと、申告に間に合わせやすくなります。
国税庁によると、確定申告書を出した後に税務署から納付書が送られてくることはありません。特例が使えずに所得税が出る場合は、売主が自分で期限までに納めます。売買代金の一部を納税分として残しておくと安心です。
国税庁の質疑応答事例に、12月に契約して翌年2月26日までに売主が取壊し、更地で引き渡す事例があります。この事例で契約日ベースの申告を選ぶと、特例は受けられないと回答されています。契約日を譲渡の日にすると、取壊しは契約締結の時まで、または契約した年の翌年2月15日までに終える必要があるためです。年をまたぐ取引では、どちらの日で申告するかを工事日程と合わせて決めてください。
相続した土地や建物を売ったときの所有期間は、亡くなった方の取得時期を引き継ぎます。1981年5月31日以前に建てた家を親が持ち続けていた場合は、所有期間が5年を超える長期譲渡所得になります。国税庁による税額の計算式は次のとおりです。
課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額。税率は所得税15%と住民税5%です。所得税の額には、さらに2.1%の復興特別所得税がかかります。取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費にできます。
次の試算は筆者が置いた仮定によるもので、相続人は1人とします。取得費は分からないため、売却額の5%とします。仲介手数料や印紙代などの譲渡費用は90万円、解体費は200万円と仮定します。買主が取壊す場合は、買主が負担する解体費の分だけ売却額が200万円下がると仮定しました。端数処理は省いています。
表:売り方と特例の有無による税額の試算(相続人1人、単位は万円)
| 項目 | 売主が解体して売る | 現況のまま売り、買主が取壊す |
|---|---|---|
| 売却額 | 2,500 | 2,300 |
| 取得費(売却額の5%) | 125 | 115 |
| 譲渡費用 | 290(解体費200を含む) | 90 |
| 譲渡所得 | 2,085 | 2,095 |
| 特例なしの税額合計 | 約423.6 | 約425.6 |
| 特例ありの税額 | 0 | 0 |
| 特例ありの手取り | 2,210 | 2,210 |
出典:国税庁 No.3208、国税庁 No.3258、国税庁 No.3270(2026年10月15日確認)/試算は筆者
売主が解体する場合の特例なしの税額は、次のように計算しました。2,500万円-125万円-290万円で、譲渡所得は2,085万円です。所得税は2,085万円×15%=312.75万円、復興特別所得税は312.75万円×2.1%=約6.57万円です。住民税は2,085万円×5%=104.25万円で、合計は約423.6万円になります。特例で3,000万円を差し引くと課税所得は0円になり、税額も0円です。
この仮定では、どちらの売り方でも手取りは2,210万円で同じです。違いは、解体費を誰がいつ払うかにあります。実際の売却額は、買主が解体費をどう見込むかで変わります。税額は個別の事情で変わるため、申告前に税理士か税務署に確認してください。
まず、買主が取壊す売り方を選べないかを仲介会社に相談してください。この売り方なら、売主は解体費を立て替えずに済みます。ただし、買主が工事と書類の提出を引き受けることが前提です。買主が見つからない場合や、更地のほうが売りやすい土地では、売主が先に解体することになります。
自治体によっては、空き家の解体に補助金があります。たとえば神戸市は、1986年12月31日以前に建てられ、腐朽や破損のある空き家の解体に最大60万円を補助しています。神戸市は、補助金の申請前に解体工事の契約や着手をした場合は対象外としています。補助を使うなら、解体業者と契約する前に申請してください。条件や金額は自治体ごとに違うため、家の所在地の窓口で確認が必要です。
自己資金や補助金で足りない分は、ローンで立て替える方法があります。選択肢には、解体費用に使う空き家解体ローンや、使い道を問わないフリーローンがあります。金利や借入期間、担保の有無は商品ごとに違うため、複数の条件を並べて比べてください。商品ごとの違いは空き家の解体費用に使えるローンの解説にまとめています。家財の片付け費用も先にかかる場合は、空き家の片付け費用の記事も参考になります。
売却代金で返す予定でも、売れる時期は確実ではありません。返済計画は、売却が遅れた場合も想定して立ててください。解体費は建物や条件で変わるため、複数の業者の見積で金額を確かめてから借入額を決めます。
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この特例は、税額が0円になる場合でも確定申告をしないと使えません。国税庁は、譲渡所得の内訳書や登記事項証明書などを添えて申告するよう求めています。売主が解体した場合や買主が取壊した場合は、取壊しを示す書類も必要です。国土交通省の資料では、取壊し後に売る場合の確認書の申請書類として閉鎖事項証明書を挙げています。
確認書は、家があった市区町村が発行します。申請には、亡くなった方の住民票の除票の写しや相続人の住民票の写しが必要です。空き家だったことを示すため、電気や水道、ガスの使用中止日がわかる書類なども求められます。千葉市は、確認書の発行は特例の適用を確約するものではないと案内しています。適用の可否や要件の詳細は市では答えられないとも書いているため、税金の判断は税務署に確認してください。申告先は売主の住所地を所轄する税務署で、千葉市も空き家の所在地で探さないよう案内しています。
解体した後の土地を売るまでの期間も考えておく必要があります。売るまでの固定資産税は、譲渡費用には含まれません。空き家のまま置いた場合の固定資産税の扱いは、空き家の固定資産税が上がる条件の記事で説明しています。
使える場合があります。家が耐震基準を満たしていれば、そのまま売っても対象です。耐震性がない家でも、2024年1月1日以後の譲渡なら、翌年2月15日までに耐震改修か取壊しをすれば対象になります。ただし、耐震改修で要件を満たすには、その期間中に工事を行う必要があります。工事をせずに耐震基準適合証明書が出た場合は、拡充された要件は使えないと国土交通省は説明しています。
2024年1月1日以後の譲渡では、家と敷地を相続した相続人が3人以上いると、控除は2,000万円までです。相続人の数は、市区町村の確認書でも確認されます。原則は登記事項証明書で確認し、相続登記が済んでいない場合などは遺産分割協議書などを出します。相続人が複数いる場合の税額は持分や事情で変わるため、税理士に相談してください。
現行制度では待てません。相続開始から3年の期限は2030年末になりますが、制度の適用期限は2027年12月31日です。譲渡日は2つの期限を両方満たす必要があります。延長は税制改正で決まるため、売却時に国税庁や国土交通省の最新情報を確認してください。
空き家がある市区町村に申請します。千葉市の場合は、空き家がある区の地域づくり支援課が窓口です。窓口や必要書類は自治体ごとに違うため、家の所在地の市区町村のホームページで確認してください。確定申告の時期は窓口が混むため、早めの申請を千葉市も勧めています。
売却代金が1億円を超えると特例は使えません。家と一体で使っていた土地を分けて売った場合や、他の相続人が売った場合も、その代金を合計して判定します。特例を受けた後に残りを売って合計が1億円を超えたときは、その売却から4か月以内に修正申告と納税が必要です。分けて売る予定があるなら、最初の売却前に税理士へ相談してください。
調査日:2026年10月15日
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