引っ越しの初期費用や家具家電で100万円ほど必要になった場合、申込先は「取引銀行」「個別の銀行」「複数の金融機関から提案を受けるサービス」の3通りに分けて考えられます。選ぶ基準は、金利の低さだけではありません。入居日や契約金の支払日から逆算して、審査から入金までの日数に間に合うかどうかが先に決まります。
この記事では、100万円の内訳の例(仮の例)、借りる額を減らす検討、申込みの逆算スケジュール、3年・5年の返済額(年3%・6%・9%・14%の仮定)を順に確認します。引越運賃そのものの決まり方は引越し費用の運賃のしくみの記事に任せ、ここでは扱いません。
目次
引っ越しに100万円かかると決まっているわけではありません。ここでは家賃10万円の賃貸住宅に移る場合を仮に置き、項目ごとの金額を例として並べます。物件、時期、荷物の量で金額は大きく変わるため、実際には見積書・重要事項説明書・契約書の数字に置き換えてください。
表1 100万円の内訳例(すべて仮の例。家賃10万円、消費税率10%と仮定)
| 項目 | 仮の金額 | メモ |
|---|---|---|
| 敷金(家賃1か月分) | 100,000円 | 退去時に精算される性質のお金 |
| 礼金(家賃1か月分) | 100,000円 | 物件によって無い場合もある |
| 仲介手数料 | 110,000円 | 家賃1か月分+消費税を上限とした場合 |
| 前家賃 | 100,000円 | 日割り分や翌月分の扱いは契約による |
| 引越代 | 150,000円 | 見積りで確認 |
| 家具・家電 | 250,000円 | 買い足す品数で変わる |
| 保証会社・火災保険・鍵交換などのその他 | 120,000円 | 契約ごとに項目が違う |
| 予備費 | 70,000円 | 見積りとのずれに備える |
| 合計 | 1,000,000円 |
仲介手数料の上限は、国土交通省が掲載している建設省告示第1552号で確認できます(2026年10月15日時点で閲覧した掲載ページの記載)。貸借の媒介では、依頼者の双方から受け取れる報酬の合計は借賃の1か月分以内です。居住用建物の賃貸借では、依頼者の一方から受け取れるのは、依頼を受ける際にその依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1か月分の2分の1以内とされています。消費税相当額は別に受け取れる旨の定めがあります。表1の11万円は「家賃10万円の1か月分に消費税10%を足した上限額」を置いた仮の数字で、半月分で済む契約なら5万5,000円になります。見積書に何か月分と書かれているかを確認してください。
100万円という額は、必要額を積み上げる前の概算であることが少なくありません。借入額が減れば、毎月の返済額と総利息も下がります。申込みの前に、次の3点を確認します。
同ガイドラインは、通常の使用による損耗や経年変化の費用を、賃借人が負担するものとはしていません。ただし対象は「賃料が市場家賃程度の民間賃貸住宅」で、契約書に特約がある場合は契約内容が原則です。敷金の戻りを当て込むなら、いまの賃貸借契約書の原状回復の条項を読み返してからにしてください。
ローンの検討で見落としやすいのは、金利より日数です。賃貸契約の初期費用には支払期限があり、融資の入金が期限に間に合わなければ、金利が低くても使えません。ここではCrowdLoanの公式FAQの数字を使い、契約金の支払日(入居日の前に来ることが多い日)をDとして逆算します。
公式の記載は次のとおりです(2026年10月15日時点)。事前審査は平日16時までの申込みで当日19時頃、16時以降は翌営業日に回答されます。金融機関へ必要書類を提出してから入金までは、10日〜2週間程度が目安です。事前審査を通過した場合の有効期間は、マイカー以外で1か月です。入金希望日が数か月先なら、入金希望日の1か月以内になってから事前審査に申し込む運用です。
表2 入金希望日(D)から逆算した目安(上記の公式の数字から筆者が組み立てた試算)
| 時期の目安 | やること | 根拠・注意 |
|---|---|---|
| Dの約4週間前 | 借入額を固めて事前審査に申し込む | 回答は当日19時頃か翌営業日。土日をはさむと延びる |
| Dの約3週間前 | 提案から1つを選び、本申込みの手続きに進む。口座の準備と書類集めを始める | 提案からは1つだけ選ぶ運用。選び直しは事前審査からやり直し |
| Dの2週間前まで | 必要書類を提出する | 提出から入金まで10日〜2週間程度が目安。金融機関で異なる |
| D | 入金を確認し、契約金を支払う | 審査の状況によっては実行が遅れることがある |
表2の「約4週間前」は、回答待ちの1〜2日、提案を選んで書類をそろえる数日、提出後の最大2週間を足し、余裕を少し見込んだ筆者の目安です。公式が示した期間ではありません。逆に、事前審査の有効期間は1か月なので、Dの1か月以上前に申し込むと、本申込みを終える前に期限が切れるおそれがあります。早すぎる申込みも避けてください。
Dまでに3週間を切っている場合は、間に合わない可能性があります。その場合は、不動産会社に支払期限の猶予を相談する、入居日を後ろにずらす、借りる額を絞るなど、ローン以外の調整を先に検討したほうが現実的です。
3通りを、手間と金利の確度で比べます。どれが最善かは、日数と、いまの取引の状況で変わります。
表3 申込先3通りの比べ方(2026年10月15日時点の整理)
| 観点 | 取引銀行に相談 | 個別の銀行に仮審査・申込み | 複数の提案を比較するサービス |
|---|---|---|---|
| 自分に提示される金利の分かり方 | 給与振込口座や住宅ローンなどの取引内容を踏まえて、窓口や担当者に確認できる | サイトの公表金利は幅で示されることが多い。仮審査で条件が分かる場合がある | 事前審査の後に、金融機関ごとの金利や借入可能額の提案が届く |
| 手間 | 1行なので少ない | 比べたい行の数だけ入力と手続きが増える | 1回の事前審査で複数の提案を見られる |
| 確定度 | 最終審査の結果による | 仮審査は融資の保証ではない | 提案は確定ではなく、金融機関の最終審査で変わる場合がある |
| 向く人 | 取引銀行の優遇が大きい人 | 候補の銀行が決まっていて日数に余裕がある人 | 複数行の条件を一度に見たい人 |
取引銀行への相談は、最初に済ませておく価値があります。CrowdLoanの公式FAQにも、同じ金融機関で給与振込口座や住宅ローンを利用していると、さらに金利が優遇されるケースがあるとの記載があります。優遇の有無や幅は金融機関ごとの条件なので、窓口で聞くのが確実です。
個別の銀行の公表金利は「年○%〜○%」のような幅で書かれているのが一般的で、その幅から自分の金利は分かりません。仮審査で条件を出してもらえる銀行もありますが、仮審査も申込みの扱いで、融資が決まったことを意味しません。複数の銀行に順番に申し込むと、記録の残り方にも注意が要ります。信用情報機関のCICでは、申込情報は照会日から6か月間保有されると公表されています。
CrowdLoanは、事前審査で提携保証会社に審査してもらい、通過すると金融機関の提案が届く仕組みです(2026年5月時点で提携金融機関は40行超と公式発表)。融資の可否と条件は保証会社と金融機関が審査し、クラウドローン自体は融資の審査をしません。使いみちには引越費用と家具家電の購入が公式に挙がっています。
注意点も押さえておきます。保証会社の事前審査も信用情報機関に記録が残ると公式に注記されています。提案からは1つだけ選び、本申込み後に別の金融機関へ変えることはできません。事前審査を通過しても、金融機関の本審査の結果で融資が実行されない場合があり、提案された金利や借入可能額も確定ではありません。本申込みは、選んだ金融機関の手続きに移ります。
実際に提示される金利は、人によって、金融機関によって異なります。次の表の年3%・6%・9%・14%は、返済額のイメージをつかむための仮定で、提示される金利の予想や、市場の金利水準を示すものではありません。
計算式は元利均等返済の月額です。月額=P×r÷(1−(1+r)−n)、Pは借入額(100万円)、rは年利÷12、nは返済回数(3年なら36回、5年なら60回)です。月額は円未満を四捨五入し、総利息は「丸めた月額×回数−100万円」としています。実際の契約では、端数の処理や最終回の金額が金融機関ごとに異なる場合があります。ボーナス併用や手数料は含みません。
表4 100万円の元利均等返済(年利はすべて仮定)
| 年利(仮定) | 3年 月額 | 3年 総利息 | 5年 月額 | 5年 総利息 |
|---|---|---|---|---|
| 3% | 29,081円 | 46,916円 | 17,969円 | 78,140円 |
| 6% | 30,422円 | 95,192円 | 19,333円 | 159,980円 |
| 9% | 31,800円 | 144,800円 | 20,758円 | 245,480円 |
| 14% | 34,178円 | 230,408円 | 23,268円 | 396,080円 |
同じ年利で比べると、5年にすると月額は3年より、表の4つの年利のどれでも約1万1,000円軽くなる一方、総利息は年6%で約6万5,000円、年14%で約16万6,000円増えます。月々の負担を抑えるほど、総額は大きくなります。返済額が家計の中で無理なく続くかを先に決め、そのうえで期間を選んでください。返済が遅れると、延滞の記録が信用情報に残るなど、今後のローンやカードに響く場合があります。
利息制限法では、借入額が100万円以上の場合の上限金利は年15%、10万円以上100万円未満の場合は年18%と定められています(e-Gov、2026年10月15日時点)。年14%の試算は上限に近い水準を置いたもので、一般的な水準という意味ではありません。年15%・5年なら月額は23,790円です。
カードローンには、決められた枠の範囲で借入と返済を繰り返せる商品があり、毎月の返済額が低めに設定されている場合があります。月々は楽でも、返済額が元本をなかなか減らさない水準だと、返済期間が長引き、利息の総額が増えるおそれがあります。引っ越し費用のように使いみちと金額が決まっている支出では、返済回数と完済日が最初から決まるタイプのほうが、総返済額を見通しやすくなります。
どちらが向くかは、商品の返済方式で決まります。契約前に、毎月の返済額で元本がいくら減るのか、完済までの期間と総支払額がどう示されるかを、各社の返済シミュレーションで確認してください。ローンの種類を知りたい場合は、引っ越し費用ローンの種類の解説の記事も参考になります。
ここまでの内容を、判断の分岐で整理します。
複数の金融機関から、自分に提示される条件を比べたい場合は、CrowdLoanの事前審査(利用は原則無料)を使う方法もあります。事前審査の通過や提案の到着、金利の引下げを保証するものではなく、融資の可否と条件は保証会社と金融機関の審査で決まります。
1か月分は上限の一つです。告示では、居住用建物の賃貸借で依頼者の一方から受け取れる報酬は、承諾を得ている場合を除き、借賃の2分の1以内とされています。見積書で何か月分になっているかと、承諾の有無を不動産会社に確認してください。
確定ではありません。公式ヘルプでは、申込みを受け付けた金融機関でも審査が行われるため、希望額の融資が必ず通るわけではなく、表示された金利や借入可能額も最終審査の結果で変わる場合があるとされています。
月額を抑えたいなら5年、総利息を減らしたいなら3年が有利です。ただし、各金融機関が選べる返済期間は商品ごとに違います。表4の3年・5年は試算のための仮定で、利用できる期間は申込先で確認してください。
なりません。公表されている金利は幅で示されることが多く、実際に適用される金利は審査の結果で決まります。取引内容による優遇があれば、条件は変わります。自分に提示される条件は、仮審査や事前審査、取引銀行への相談で確かめてください。
調査日:2026年10月15日。金利・審査・所要日数などの条件は変わる場合があります。
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