大学の交換留学や短期研修で使える返済不要の奨学金として、日本学生支援機構(JASSO)の「海外留学支援制度(協定派遣)」があります。月額8万〜12万円が支給されますが、学生がJASSOへ直接申し込む制度ではありません。在籍する大学のプログラムが採択され、さらに学内選考を通る必要があります。
この記事では、2026年10月8日時点のJASSOと大学の公式資料をもとに、支給額、要件、渡航前に立て替える費用を整理します。2027年度の金額や日程はJASSOの公開ページで確認できなかったため、2026年度の内容を実績として紹介します。
目次
JASSOの協定派遣ページ(2026年6月22日更新)によると、対象は日本の大学・大学院・短大・高専・専修学校の専門課程などに在籍したまま、協定校などへ8日以上1年以内派遣されるプログラムの参加者です。留学費用の一部を奨学金と渡航支援金で支援します。
手続きは2段階です。まず在籍大学が派遣プログラムをJASSOに申請し、JASSOが審査して支援対象を決めます。次に大学が学生を募集・選考し、JASSOに申請します。JASSOは承認の可否を大学へ通知します。JASSOのページには「学生個人での派遣プログラムの申請はできません」と書かれています。
支援枠はプログラムごとに割り当てられ、2026年6月22日付の追加採択一覧にも割当人数が並んでいます。所属大学のプログラムが採択されていなければ、この奨学金は使えません。
奨学金の月額は派遣先の地区区分で決まります。区分はJASSOの「国・地域コード表」に国・都市ごとに掲載されています。
| 区分 | 月額 | コード表での例 |
|---|---|---|
| A地区 | 12万円 | ロンドン、ニューヨーク、トロント |
| B地区 | 11万円 | オーストラリア、ソウル、英国のロンドン以外 |
| C地区 | 9万円 | ドイツ、台湾、韓国のソウル以外 |
| D地区 | 8万円 | ベトナム |
渡航支援金は2種類あります。一定の家計基準を満たす人は16万円、一定の派遣期間を満たす人は1万円です。中央大学や横浜市立大学の学内要項では、家計基準は家計支持者の年間収入(税込)が300万円以下、給与以外の所得がある世帯は年間所得200万円以下とされています。派遣期間の基準は奨学金の支給回数が6回以上です。両方に当てはまる場合は16万円のみの支給になります。
支給回数は、派遣期間を31日ごとに区切って決めます。大学の要項では31日で1回、156〜186日で6回、342〜365日で12回です。31日未満のプログラムの扱いは公開資料で確認できなかったため、大学に確認してください。
JASSOのページが示す要件は次のとおりです。日本国籍または永住許可があること。在籍大学から「経済的理由により自費のみでの参加が困難」と認められること。派遣後に在籍大学へ戻り、学位を取得または卒業すること。学業成績が優秀であること。ほかに査証の取得や派遣先の受入許可も必要です。
併給にも制限があります。JASSOの第一種・第二種奨学金(貸与型)とは併給できます。国内の給付奨学金や「トビタテ!留学JAPAN」とは併給できません。横浜市立大学は、国内の給付奨学金を休止すれば受給できると説明しています。
成績の具体的な基準は大学の学内要項に書かれています。中央大学、東北大学、横浜市立大学などの2026年度要項では、JASSOの方法で計算した成績評価係数2.30以上(3.00満点)が条件です。成績を3・2・1・0点に換算し、総登録単位数で割って求めます。大学独自のGPAとは計算が違うので注意してください。
月額奨学金の家計基準について、JASSOの公開ページは全国共通の所得上限を示していません。長崎大学経済学部は、JASSOの第二種奨学金(在学採用)の家計基準を目安にすると案内しています。中央大学は所得証明書で経済状況を確認し、枠が余れば他の学生も採用するとQ&Aで説明しています。
2026年10月8日時点で、JASSOの協定派遣ページに載っている採択プログラム一覧と採用学生専用ページは2026年度分までです。2027年度分のページ(URL末尾が2027.html)は存在せず、エラーページに転送されました。大学向けの募集要項は学校担当者用のログインページにあり、一般には閲覧できません。2027年度の協定派遣の支給額や要件は、2026年10月8日時点で公表を確認できませんでした。
中央大学は、2027年度春派遣の交換留学生に2026年4月24日までの仮応募を求め、2026年7〜8月頃に本応募を行う予定と案内していました。奈良女子大学の2027年度交換留学の学内募集は2026年10月2日正午締切です。JASSOの支援を受けられることになった場合に推薦候補者となる場合がある、と書かれています。所属大学の案内を早めに確認してください。
JASSOの採用学生向けページによると、奨学金は支給対象月ごとに在籍大学が在籍確認をした後に支給されます。立命館アジア太平洋大学(APU)の要項では、原則として各月の月末に1か月分を支給し、渡航支援金は留学開始月か初回の奨学金支給時に支払うとしています。航空券や保険、ビザ、住居のデポジットは出発前に自分で立て替えることになります。
横浜市立大学の要項の例を使って試算します。留学開始日が2026年10月12日、終了日が2027年7月16日の場合、留学日数は278日で支給は9回です。B地区のオーストラリアに留学すると、奨学金は11万円×9回で99万円です。6回以上なので渡航支援金1万円が加わり、合計100万円になります。家計基準を満たす場合は渡航支援金が16万円になり、合計115万円です。
下の表の金額は仮定で、相場を示すものではありません。
| 費用(仮定) | 金額の仮定 | 支払時期 |
|---|---|---|
| 往復航空券 | 20万円 | 出発前 |
| 海外旅行保険(約9か月) | 20万円 | 出発前 |
| ビザ申請・健康診断など | 5万円 | 出発前 |
| 寮・住居のデポジット | 15万円 | 出発前〜到着時 |
| 到着後1か月目の生活費 | 20万円 | 初回支給前 |
| 合計 | 80万円 |
この仮定では、出発前だけで60万円、初回支給までに80万円を用意する計算です。奨学金は渡航後に毎月受け取る形です。協定に基づく交換留学では、在籍大学の授業料を留学中も納める例があります。奈良女子大学は、派遣先の授業料は原則免除される一方、本学の授業料は納める必要があると案内しています。
JASSOの「第二種奨学金(海外)」は、海外の大学・大学院で学位を取る人向けの貸与奨学金で、協定派遣のような短期留学向けではありません。短期留学向けだった第二種奨学金(短期留学)と第一種奨学金(海外協定派遣対象)は、令和6年度以降は募集されていません。
国内の第一種・第二種奨学金を借りている学生は、条件を満たせば短期留学中も貸与を続けられます。3か月以上の協定留学などでは、一時金の「留学時特別増額貸与奨学金」を10万〜50万円の中から選んで借りられます。ただし、日本政策金融公庫の国の教育ローンを利用できなかった世帯が対象です。留学開始の1か月前までに在籍大学を通じて申し込みます。
保護者が借りる国の教育ローンは、修業年限3か月以上の外国の教育施設への留学なら、学生1人あたり上限450万円です。それより短い留学は350万円が上限です。金利は年4.05%(固定、令和8年7月1日現在)で、ひとり親世帯や世帯年収200万円以内などは0.4%低くなります。金利は年2回見直されるため、申込時点の金利を確認してください。融資には審査があり、申込みは必要時期の2〜3か月前が目安です。留学先へ出す財政能力証明書のための預金資金は対象外です。制度の全体像は国の教育ローンの記事で解説しています。
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