2023年06月26日
体外受精にチャレンジしたい方にとって、費用は大きなハードルのひとつ。挑戦するかどうかの判断材料として、お金について正しい知識をもっておくことはとても大切です。相場や、保険適用、高額療養費制度や医療費控除の対象となるのか、など、体外受精の費用についての基礎知識を解説します。
自治体や民間の医療保険、会社によっては、負担を軽減するための制度やサポートがあることも。お金に関する疑問や不安をクリアにして、パートナーとしっかり話し合いながら、後悔のない選択をめざしましょう!
目次
2022年4月からは健康保険の適用範囲が広がり、体外受精などの高度な不妊治療についても原則3割負担で受けられるようになりました。
体外受精と顕微授精については、治療開始時の女性の年齢や1子あたりの回数に制限が設けられています。年齢や回数が保険適用外となった方が体外受精などの治療を受けるには、費用が全額自費負担となりますので、注意が必要です。
保険診療は医療行為の個々の技術やサービスごとに診療報酬点数が決められているため、同じ治療内容であればどこのクリニックでも費用は同じとなります。
体外受精費用の内訳は次の表のとおりです。
<採卵>
生殖補助医療管理料 | 900円 |
診察、検査、薬代 | 約3万5,000円 |
採卵10個 | 3万1,200円 |
受精(コンベンショナルIVF) | 1万2,600円 |
培養(胚盤胞5個まで) | 3万7,500円 |
胚凍結5個 | 2万1,000円 |
<移植>
生殖補助医療管理料 | 900円 |
診察、検査、薬代 | 約1万5,000円 |
アシステッドハッチング | 3,000円 |
凍結融解移植 | 3万6,000円 |
検査内容や採卵個数、受精卵の凍結保存の有無などにより価格は変わりますが、体外受精の負担額の相場は1回6.5~20万円程度です。自費診療では20~50万円程度なので、保険適用によりかなり負担は軽減され、以前よりチャレンジしやすくなりました。
とはいえ、保険が適用されても高額な治療であることには変わりありません。1度で結果が出ない場合は複数回治療を受けることになり、金額がかさんでしまうこともあります。
2022年3月31日までは全国一律で1回あたり30万円の助成金を支給する「特定不妊治療助成制度」という助成金の制度がありました。2022年4月から体外受精が保険適用となったことにより、現在は原則的に国の助成金は廃止されています。
体外受精は基本的に8つのステップでおこなわれます。各ステップに、複数方法の選択肢がある場合もあり、状況をふまえながら、費用、効果、リスク、副作用などを考慮し、最適な方法を選択します。
排卵障害のある場合などに、排卵誘発剤を用いて卵巣を刺激することで、卵胞(卵子)を発育させ、排卵を促します。正常周期で排卵が起こっている方の場合でも、確率を上げるためにおこなうことがあります。
膣から細い針を刺して、排卵前の卵胞から卵子を吸引して回収します。針を刺すと痛みが出るため、麻酔を使うこともできます。
精子は採卵当日に必要となるため、自宅で採取した精液を持参するか、病院内の採精室で採精します。
体外受精の場合、精液を洗浄濃縮したあと、良好な運動精子を回収し、シャーレの上で卵子と精子を自然に出会わせます。
受精卵は、2〜6日間専用の培養液で培養されます。温度とガス濃度をコントロールし、体内と同じ環境を作ることで、細胞分裂が促され、受精卵は「胚」となります。
良好な胚を、子宮内に移植します。多胎を防ぐため、戻せる受精卵の数は原則1個です。着床率を高めるため、「アシステッド・ハッチング」という方法をおこなうこともあります。
着床率を高めるために、黄体ホルモンを補充する場合があります。
胚移植から2週間後に、尿検査で判定されます。
人工授精は、採精し処理された精子を排卵の時期に管で直接子宮に注入する方法です。
人工授精を一定期間繰り返しおこなってもうまくいかない場合や、卵管が癒着し閉塞している場合、多嚢胞性卵巣症候群のように卵巣に問題がある場合、抗精子抗体をもつ女性の場合などのケースでは体外受精が選択されます。
体外受精は、 あらかじめ採卵した卵子と、採精し処理された精子を同じシャーレに入れ、受精、胚培養させたのちに、子宮内に移植する方法です。
人工授精の場合は体内で、体外受精の場合は体外で受精が起こるという違いはありますが、どちらも精子が自力で卵子に入っていくことで受精が起こります。
精液所見が不良で体外受精が見込めない場合は、体外で顕微鏡を使用し、精子を細いガラス管を用いて卵子に注入する顕微授精をおこないます。体外受精と顕微受精は状況にあわせ、どちらか、または両方を組み合わせた方法がおこなわれます。
2022年4月から体外受精が保険適用になったことにより、高額医療費制度も対象となるなど、高額な費用が心配で体外受精の挑戦をためらっていた方にも嬉しい改定がありました。体外受精費用を軽減する制度やサービスは上手に活用しましょう。
「高額療養費制度」とは、健康保険を使って病院にかかり、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担分が一定の額を超えた場合、その超えた金額が払い戻される制度です。
高額な治療法にチャレンジしたい場合も、一定額までの支払いで済むと分かっていれば安心ですね。
支払いの限度額は所得により異なりますので、ご自身の1ヶ月の負担限度額をチェックしてみてください。また、高額療養費制度の対象は、保険適用とならない自由診療のみの治療や、先進医療は対象外となるので注意しましょう。
<70歳未満の高額療養費制度>
(ア)上位所得者 (健保:月収83万円以上、国保:所得901万円超)
(イ)上位所得者 (健保:月収53万〜79万円、国保:所得600万〜901万円)
(ウ)一般所得者 (健保:月収28万〜50万円、国保:所得210万〜600万円)
(エ)一般所得者 (健保:月収26万円以下、国保:所得210万円以下)
(オ)住民税非課税世帯
所得区分 | 1ヶ月の自己負担限度額 | 4回目以降 |
(ア)上位所得者 | 25万2600円+(医療費−84万2000円)×1% | 14万100円 |
(イ)上位所得者 | 16万7400円+(医療費−55万8000円)×1% | 9万3000円 |
(ウ)一般所得者 | 8万100円+(医療費−26万7000円)×1% | 4万4400円 |
(エ)一般所得者 | 5万7600円 | 4万4400円 |
(オ)住民税非課税世帯 | 3万5400円 | 2万4600円 |
上の表の(ウ)に該当する方の1ヵ月の治療費が50万円だった場合を例に、実際に計算してみましょう。80,100円+(500,000円-267,000円)×1%=82,430で、自己負担限度額は82,430円となります。本来、50万円の治療費の場合、保険適用により自己負担は3割の15万円ですが、限度額が82,430円ですので、この額を超過した67,570円は払い戻されるということになります。
高額療養制度を利用する際には、支払いの仕方が2パターンあります。
1つ目は、一旦保険適用後の金額を窓口で支払い、治療後に申請することで払い戻しを受けるパターンです。この場合、払い戻しが受診から3ヵ月程度かかります。
2つ目は、支払いの際に窓口で「限度額適用認定証」を保険証とあわせて提示し、自己負担限度額までの金額のみを支払うパターンです。この場合、自己負担限度額を超えた分は医療機関から健保へ直接請求されます。
医療費が高額になりそうだと事前に分かっており、窓口での支払いを最小限に留めたいときは、この「限度額適用認定」の利用がおすすめです。
「限度額適用認定証」は、国民健康保険は市役所などの国民健康保険係の窓口、協会けんぽ、組合健保などの被用者保険は保険の所属支部に申請すると交付されます。
「医療費控除」とは、医療費が家計に与える負担を軽減するため、課税対象となる所得から医療費を差し引くことができる制度です。1年間にかかった医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)を超えた場合に利用できます。確定申告で申請することで、還付金を受け取れるほか、翌年の住民税も安くなります。
体外受精の場合、次の項目が医療費控除の対象となります。領収書等を確定申告に向けてしっかり保管しておきましょう。
医療費は本人だけでなく家族(同一家計であれば別居でも可)の分も合算できます。体外受精の場合、女性と男性それぞれ別々に医療費がかかることもあるので、まとめられるのは嬉しいポイントですね。
保険適用とならない先進医療を体外受精の過程に取り入れたいときは、自治体で助成制度がないか確認してみましょう。
例えば、東京都の場合、不妊治療の先進医療にかかった費用の10分の7について、15万円を上限に助成する制度があります。治療開始日の妻の年齢が39歳までの夫婦は6回まで、40歳から42歳までの夫婦は3回まで申請できます。
ただし、保険適用となる不妊治療とあわせて実施した先進医療が対象で、単独で先進医療を実施した場合は、対象とならないため注意が必要です。その他、対象となる先進医療や、対象となる方についてなど、さまざまな要件がありますので、東京都のホームページをチェックしてみてくださいね。
助成金の有無や上限などは都道府県により異なりますので、お住まいの自治体に確認してみましょう。
2022年4月に体外受精が健康保険の適用となったことで、民間の医療保険でも、体外受精にまつわる一部の治療が手術給付金などの請求対象として扱われるようになりました。採卵術、精巣内精子採取術、胚移植術などが対象となっていることがあります。
また、先進医療についても、先進医療給付金の請求対象として、給付金が受けられる場合があります。
民間の医療保険に加入されている方は、契約内容を確認してみましょう。
産休や育休の拡充などの子育て支援に加え、不妊治療に専念するための休職や休暇への対応、相談窓口の設置など、不妊治療についても独自の支援をおこなう企業が増えています。なかには、給付金があったり、低金利または無利息で不妊治療費を貸したりと、資金面のサポートをおこなっている事例も。
社内の担当者に利用できる制度がないか確認してみてくださいね。
体外受精の費用はクリニックや病院の窓口で現金で支払うのが一般的です。現金以外の支払方法を希望する場合は、クリニックや病院選びの時点で、比較項目に入れておきましょう。
現金払いは、手続きも手数料も不要で、最もシンプルな方法です。体外受精の費用は保険適用により負担が軽くなったとはいえ、平均で15万円程度とまとまった費用が必要となります。現金での支払いのみしか対応していない病院もありますので、多めに手元に現金を用意しておくと安心ですね。
クリニックによってはクレジットカード払いに対応しているところもあります。1回払いのみに対応している場合がほとんどですが、分割払いに対応している場合もあるため、利用を希望するときは事前に確認しておくといいでしょう。
お金を貯めてから治療を受けようと思っていると、妊娠できるタイミングを逃してしまうことにもなりかねません。手元の資金がないけれど治療を早く始めたい、不妊治療の費用が思ったよりもかさんでしまい、次のステップに進むことをためらっている、というときは、ローンの利用も検討してみてはいかがでしょうか?
金融機関の中には妊活に特化したローンを提供している場合があります。その他、メディカルローンやフリーローン、カードローンも体外受精費用として使えるので、金利などを比較して自分に合ったものを選ぶことがおすすめです。
体外受精にローンの利用を検討したいと思っても、自分にぴったりなローンを探すのは大変です。体外受精に使えるローンは不妊治療・妊活専用ローン、メディカルローンやフリーローンと多種多様なため、それぞれ金利をチェックするのは時間も労力もかかります。そこでおすすめなのが「クラウドローン」です。
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不妊治療をするうえで最も大切なのは、どこまで治療を望むのか、予算はいくらまでにするのかなどをパートナーと話し合いながらステップを選択していくことです。体外受精は必ず結果が出るものではなく、回数を重ねるごとに費用も膨らみます。国や自治体、勤務先の制度をフル活用し、できるだけ経済的な負担を抑えながら、後悔のない選択をするために、ときにはローンも賢く使いましょう。
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体外受精は費用面でのハードルが高い治療の一つです。保険適用の拡大により、負担は軽減されましたが、依然として高額な治療費がかかります。医療費控除や高額療養費制度を上手に活用し、支払い負担を軽減する方法もあります。また、自治体や民間の医療保険、会社の制度など、さまざまな支援がありますので、確認して活用することが重要です。さらに、治療費用を支払う際は、クレジットカードやローンを利用することも検討してみましょう。これらの手段を組み合わせ、体外受精による妊活をより負担の少ないものにしていきましょう。