2023年01月26日
住宅ローン控除はマイホームの購入だけでなく、リフォームでの利用も可能。要件を満たせば、10年間で最大140万円の控除が受けられます。今回は、住宅ローン控除を利用するためのリフォームの条件や申告の方法、必要な書類などを解説。耐震やバリアフリーなど特定のリフォームで使える減税制度について紹介するほか、リフォームローンを利用したときの返済額や控除額についてシミュレーションもおこないます。お得な制度を活用して、我が家を快適にリフォームしましょう。
目次
住宅ローン控除(住宅ローン減税)は、住宅ローンの返済に伴う家計への負担を減らすために設けられた制度で、要件を満たせば所得税が安くなります。
マイホームを購入したときだけでなく、要件を満たせばリフォームにも使えます。2022年1月1日から2025年12月31日までの間にリフォームした場合は、年末のローン残高の0.7%(最大2,000万円まで)を10年間控除でき、控除額の合計は10年間で最大140万円となります。
なお、所得税で控除しきれない金額は、前年の課税所得金額等の5%(最高97,500円)を上限に、翌年の住民税から差し引かれます。
住宅ローン控除を利用するためには、収入や費用、工事内容などいくつもの要件を満たす必要があります。まずは、どのような工事が対象となるのか見ていきましょう。
リフォームで住宅ローン控除を利用するためには、次のいずれかの工事に該当する必要があります。
住宅ローン控除を利用するためには、次の全ての要件に該当する必要があります。
自己所有かつ自分が住むための住居が対象のため、親が所有する家のリフォーム費用を同居の子どもが負担する場合は控除を受けられません。また、別荘や賃貸住宅についても控除の対象外です。
なお、住宅ローン控除の制度は変更されることがあります。利用前に国税局や国土交通省のホームページなどで最新の情報を確認しましょう。
耐震・介護・省エネなど、住宅の性能向上を目的としたリフォームでは、リフォーム減税(住宅特定改修特別税額控除)も利用できます。住宅ローン控除はローンの利用が必須ですが、リフォーム減税はローンを組まなくても適用されます。
2023年居住開始が対象となるリフォーム減税は5種類で、このうち耐震リフォームのみ住宅ローンとの併用が可能です。その他の併用の可否は次の表の通りです。
特定の性能向上リフォームをおこなうと、必須工事は費用相当額の10%が所得税から控除されます。控除額は、実際にかかった金額ではなく、リフォームの種類ごとに決められた標準的な工事費用相当額をもとに算出するのが特徴です。それぞれ限度額が設定されており、超えた金額は同時におこなうリフォーム工事費用との合算が可能です。
同時におこなう工事と限度額を超えた必須工事は、次のいずれかの少ない金額を限度に5%の控除を受けられます。
住宅ローン控除とリフォーム減税でどちらがより減税効果が高いかは、工事の種類や金額、本人の所得により異なります。計算したうえでお得な制度を利用しましょう。
また、リフォームの種類によっては、翌年の固定資産税(家屋のみ)の減額を受けられるものもあります。リフォームの種類ごとに詳しく見ていきましょう。
標準的な工事費用相当額の限度額 | 250万円 |
最大控除額(必須工事とその他工事合計) | 62.5万円 |
固定資産税の軽減 | 1/2(1戸当たり120㎡相当分が限度) |
主な要件 | 1.自ら居住する住宅であること2.現行の耐震基準に適合していない住宅であること |
対象となる工事 | 耐震金物や耐震パネルの取り付けや屋根材の交換など |
耐震リフォームは現行の耐震基準に適合させるための耐震改修工事です。このため、現行の耐震基準基準に適合していない場合に限り控除が受けられます。
耐震リフォームは住宅ローン控除との併用ができるだけでなく、住宅のある自治体によっては独自の補助金が給付される場合もあります。制度の利用には自治体への事前申請が必要となるため、まずは自治体の窓口やホームページで確認しましょう。
標準的な工事費用相当額の限度額 | 200万円 |
最大控除額(必須工事とその他工事合計) | 60万円 |
固定資産税の軽減 | 1/3(1戸当たり100㎡相当分が限度) |
主な要件 | 1.本人または同居の親族にバリアフリー化が必要なこと 2.改修工事後の床面積50㎡以上であること |
対象となる工事 | 通路の拡幅や階段の勾配の緩和、段差の解消、浴室やトイレの改良、手すりの取付けなど (標準的な工事費用相当額から補助金等を除いた額が50万円超える場合のみ対象) |
バリアフリーリフォームは、段差をなくしたり手すりを付けたりして、高齢者などが生活しやすい住居に改修する工事です。このため、本人または家族の年齢や要介護認定の有無などの制約があります。
バリアフリーリフォームも、自治体から補助金を受け取れる場合があります。工事前に自治体のホームページなどで確認しましょう。
標準的な工事費用相当額の限度額 | 250万円(350万円※) |
最大控除額(必須工事とその他工事合計) | 62.5万円(67.5万円※) |
固定資産税の軽減 | 1/3(1戸当たり120㎡相当分が限度) |
主な要件 | 1.自ら居住する住宅であること 2.改修工事後の床面積50㎡以上であること |
対象となる工事 | 窓や天井、壁の断熱性を高める工事と、併せておこなう省エネ設備への交換、太陽光発電設備の設置工事 (標準的な工事費用相当額から補助金等を除いた額が50万円超える場合のみ対象) |
省エネリフォームとは、窓や壁の断熱性向上や省エネ使用の給湯器や冷暖房機への交換など、エネルギー消費を抑えるためのリフォームです。省エネリフォームで控除を受けるには窓の断熱工事が必須で、例えばエコ給湯器だけ導入しても対象にはなりません。なお、同時に太陽光発電設備設置工事をおこなうと、限度額や控除額が大きくなります。
標準的な工事費用相当額の限度額 | 250万円 |
最大控除額(必須工事とその他工事合計) | 62.5万円 |
固定資産税の軽減 | ー |
主な要件 | 1.自ら居住する住宅であること 2.改修工事後の床面積50㎡以上 |
対象となる工事 | 調理室、浴室、トイレ、玄関を増設する工事 (標準的な工事費用相当額から補助金等を除いた額が50万円超える場合のみ対象) |
三世代同居リフォームは、キッチンやトイレの増設など親世帯と子世帯が快適に同居しやすくするためのリフォームです。実際に三世代が同居することは要件に含まれていないため、将来的に同居するための準備として早めにリフォームする場合も対象です。
耐震or省エネ+耐久性向上 | 耐震+省エネ+耐久性向上 | |
標準的な工事費用相当額の限度額 | 250万円(350万円※) | 500万円(600万円※) |
最大控除額(必須工事とその他工事合計) | 62.5万円(67.5万円※) | 75万円(80万円※) |
固定資産税の軽減 | 2/3(1戸当たり120㎡相当分が限度) | |
主な要件 | 1. 自ら所有し居住する住宅であること 2. 改修工事後の床面積50㎡以上 | |
対象となる工事 | 天井や床下の点検口取り付けや浴室の外壁の防蟻処理など、住宅を長期間良好に保つための工事 (耐震改修、省エネ改修、耐久性向上改修工事の各々について、標準的な工事費用相当額 から補助金等を除いた額が50万円超える場合のみ対象) |
長期優良化リフォームは、耐震改修または省エネ改修工事と併せて住宅の耐久性を高める工事をおこなうことで、既存住宅の長寿命化や性能向上を促進するリフォームです。限度額や最大控除額は、耐震改修と省エネ改修を両方おこなう場合とどちらか片方の場合、また、併せて太陽光発電装置を設置する場合で異なります。
通常、年間110万円を超える贈与には贈与税がかかります。しかし、リフォーム資金として親や祖父母から贈与を受けた場合、要件を満たせば最大1,000万円まで非課税措置を受けられます。主な要件は次の通りです。
制度を利用して贈与を受ける場合は、翌年の2月1日から3月15日の間に税務署への贈与税の申告が必要です。なお、制度の適用は2023年12月31日までです。
住宅ローン控除やリフォーム減税を受けるには、入居した翌年に確定申告をおこないます。住宅ローン控除は10年間にわたって控除が受けられますが、会社員は最初の年に確定申告をすれば、次の年から会社の年末調整で手続きしてもらえます。
なお、固定資産税の控除を受けるには、工事完了後3ヶ月以内に改修工事内容が確認できる書類等を添付して市区町村に「固定資産税減額申告書」を提出します。該当する場合は、確定申告だけでなく市区町村への申告も忘れずおこないましょう。
確定申告は、翌年の2月16日から3月15日と期間が決められています。入手先が異なる複数の書類があるため、ギリギリになってあわてないよう余裕をもって準備しておきましょう。
入手先 | 書類名 |
税務署または国税庁ホームページ | 確定申告書 |
税務署または国税庁ホームページ | 住宅借入金等特別控除額の計算明細書 |
金融機関 | 借入金の年末残高等証明書 |
法務局 | 登記簿(全部事項証明書) |
リフォーム業者 | 増改築等工事証明書 |
その他 | ・所得の計算に必要な書類(源泉徴収票など) ・マイナンバーカードまたは通知カード ・本人確認書類(運転免許証やパスポートなど) |
確定申告書と住宅借入金等特別控除額の計算明細書は、e-Taxで作成・提出することも可能です。また、リフォーム資金の贈与を受けた場合は、贈与税の申告書と贈与者と受贈者の関係を証明する書類(戸籍謄本)が必要です。
特定のリフォームで控除を受けるには、工事費用や完成後に基準を満たしていることを証明する書類が必要です。書類の種類はリフォームの種類ごとに異なるため、リフォーム業者に確認して準備しましょう。
それでは、住宅ローン控除の対象となるリフォームをおこなった場合、利息や控除額はいくらになるのでしょうか。次の条件でシミュレーションしてみましょう。
借入額:500万円
返済期間:15年(2023年5月から返済開始)
金利:年3.0%
返済方法:元利均等方式
ボーナスによる返済:なし
年 | 年間返済額 | 利息分 | ローン年末残高 | 控除額 | |
1年目 | 2023年 | ¥276,232 | ¥98,446 | ¥4,822,214 | ¥33,700 |
2年目 | 2024年 | ¥414,348 | ¥140,922 | ¥4,548,788 | ¥31,800 |
3年目 | 2025年 | ¥414,348 | ¥132,605 | ¥4,267,045 | ¥29,800 |
4年目 | 2026年 | ¥414,348 | ¥124,036 | ¥3,976,733 | ¥27,800 |
5年目 | 2027年 | ¥414,348 | ¥115,205 | ¥3,677,590 | ¥25,700 |
6年目 | 2028年 | ¥414,348 | ¥106,106 | ¥3,369,348 | ¥23,500 |
7年目 | 2029年 | ¥414,348 | ¥96,733 | ¥3,051,733 | ¥21,300 |
8年目 | 2030年 | ¥414,348 | ¥87,072 | ¥2,724,457 | ¥19,000 |
9年目 | 2031年 | ¥414,348 | ¥77,115 | ¥2,387,224 | ¥16,700 |
10年目 | 2032年 | ¥414,348 | ¥66,858 | ¥2,039,734 | ¥14,200 |
11年目 | 2033年 | ¥414,348 | ¥56,290 | ¥1,681,676 | ― |
12年目 | 2034年 | ¥414,348 | ¥45,400 | ¥1,312,728 | ― |
13年目 | 2035年 | ¥414,348 | ¥34,176 | ¥932,556 | ― |
14年目 | 2036年 | ¥414,348 | ¥22,613 | ¥540,821 | ― |
15年目 | 2037年 | ¥414,348 | ¥10,701 | ¥137,174 | ― |
16年目 | 2038年 | ¥138,029 | ¥855 | 0 | ― |
合計 | ¥6,215,133 | ¥1,215,133 | ¥243,500 |
500万円を金利3%、15年ローンで借り入れた場合、住宅ローン控除額は243,500円、毎月の返済額は34,529円となりました。さらに低金利のリフォームローンを選べば、資金が足りないときでも負担を抑えてリフォームできます。
リフォームローンは多くの銀行で取り扱っており、金利の相場は無担保型で2~4%程度です。銀行ごとに金利は異なるため、複数のプランを比較して低金利のローンを選びましょう。
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リフォームローンは住宅ローンより借入までの期間が短く、審査も通りやすい傾向にあります。リフォーム資金が足りないときは利用を検討してはいかがでしょうか。
自宅をリフォームすると、工事内容によっては住宅ローン控除やリフォーム減税、固定資産税の減税、自治体の補助金などの制度が利用できます。これらを利用するには確定申告や自治体への申請が必要です。要件や必要書類などについてリフォーム業者に確認のうえ、忘れず手続きをおこないましょう。
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