総量規制は、消費者金融やクレジットカードのキャッシングなど、貸金業者からの借入れの合計を年収の3分の1までに抑える貸金業法のルールです。年収300万円なら、すべての貸金業者を合わせて100万円までになります。銀行のカードローン、クレジットカードのショッピング、住宅ローンは、この計算に入りません。
ただし、銀行カードローンに上限がないわけではありません。2017年の全国銀行協会の申し合わせ以降、多くの銀行が他社の借入れを含めた独自の上限を設けています。また、年収の3分の1以内でも、審査で借りられる額は個別に決まります。総量規制は借りられる額の保証ではなく、超えてはいけない上限です。この記事では、条文と金融庁・日本貸金業協会の説明をもとに、計算方法、対象外になる借入れ、銀行カードローンの扱いを整理します。
目次
根拠は貸金業法13条の2です。同条は、個人の借入れの合計額が「基準額」を超えることになる契約を、貸金業者が結ぶことを禁じています。基準額は、年間の給与などの定期的な収入の合計に3分の1を掛けた額です。金融庁は、年収300万円の人は貸金業者から100万円までしか借りられないと説明しています。この規制は2010年6月18日から実施されています。
年収に入る収入を定めているのは、貸金業法施行規則10条の22です。給与のほか、年金、恩給、事業として行わない不動産の賃貸収入、過去の状況から安定的と認められる事業所得です。日本貸金業協会は、宝くじや競馬などの一時的な収入は年収に含まれないと説明しています。給与明細で年収を出す場合は、直近2か月分以上の給与(賞与を除く)の月平均を12倍し、過去1年以内の賞与を確認できればそれを加えられます。月給25万円なら年収300万円で基準額は100万円、確認できた賞与が60万円あれば年収360万円で基準額は120万円です。
合計額の数え方にも決まりがあります。貸金業法13条3項は、申込先の貸金業者の分と、指定信用情報機関で分かる他の貸金業者の残高を合わせるとしています。申込先のカードローンは、使った残高ではなく契約の極度額で数えます。年収300万円の人がA社で80万円借りているなら、B社から借りられるのは300万円×3分の1-80万円=20万円までです。これは金融庁のQ&Aの例です。
年収450万円の会社員が、新しく消費者金融のカードローンを申し込む場合を考えます。基準額は450万円×3分の1=150万円です。いまの借入れが次のとおりだとします。数字はすべて仮定です。
| 借入れ | 残高 | 総量規制の計算 | 理由 |
|---|---|---|---|
| A社(消費者金融)のカードローン | 40万円 | 算入する | 貸金業者の貸付け |
| クレジットカードのキャッシング | 10万円 | 算入する | キャッシングは貸金業法の対象 |
| 銀行のカードローン | 50万円 | 算入しない | 銀行は貸金業者ではない |
| クレジットカードのショッピングリボ | 20万円 | 算入しない | ショッピングは割賦販売法の対象 |
| 銀行のマイカーローン | 120万円 | 算入しない | 銀行の貸付けで貸金業法の適用外 |
算入するのは40万円+10万円=50万円で、残りの枠は150万円-50万円=100万円です。新しいカードローンの極度額は、最大でも100万円になります。借入れの合計は240万円でも、総量規制の計算では50万円しか数えません。ただし、銀行カードローンやショッピングリボの残高も信用情報には登録されており、審査では返済能力の判断材料になります。総量規制の枠が残っていても、審査で希望どおりの額になるとは限りません。日本貸金業協会も、年収の3分の1以内でも借りられるとは限らないと説明しています。
申込額によっては収入証明書も必要です。貸金業法13条3項により、申込先の貸金業者で50万円を超える場合、または他社と合わせて100万円を超える場合は、源泉徴収票などの提出が義務になります。このケースで極度額100万円を申し込むなら、提出が必要です。
総量規制には、計算から外れる借入れが2種類あります。日本貸金業協会は、除外貸付けは借入残高に算入されず、例外貸付けは算入されると説明しています。名前は似ていても、その後の借入れへの影響は異なります。
| 区分 | 主な貸付け | 残高への算入 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 除外貸付け | 住宅ローン、所有権留保などが付いた自動車ローン、高額療養費の貸付け、有価証券担保、居宅以外の不動産担保、売却予定の不動産で返す貸付け | 算入しない | 施行規則10条の21 |
| 例外貸付け | 顧客に一方的に有利な借換え、残高を段階的に減らすおまとめ、緊急の医療費、10万円以下・3か月以内の緊急の費用、配偶者貸付け、個人事業者・開業資金、銀行融資までの1か月以内のつなぎ | 算入する | 施行規則10条の23 |
自動車ローンが除外になるのは、施行規則10条の21第1項3号により、自動車の所有権を貸金業者が取得するか、自動車が譲渡担保になっているものに限られます。銀行や信用金庫、労働金庫などの住宅ローン・自動車ローンは、金融庁の説明どおり、そもそも貸金業法の適用がありません。
おまとめローンは例外貸付けです。日本貸金業協会は要件として、対象が貸金業者からの借入れであること、借換え後の金利が借換え前を上回らないこと、返済で残高が段階的に減ること、1か月の負担が増えないこと、担保・保証の条件が厳しくならないことを挙げています。銀行や親族からの借入れは対象外です。例外貸付けで借りた額は残高に算入されるので、おまとめ後に年収の3分の1を超えていれば、除外・例外以外の新しい借入れはできません。
配偶者貸付けは、本人と配偶者の年収を合わせた3分の1まで借りられる制度です。日本貸金業協会は、配偶者の収入証明、身分関係の公的書類、配偶者の同意書などが必要だとし、夫の年収250万円・妻50万円なら妻は合計300万円の3分の1で100万円まで借りられると説明しています。施行規則10条の23第3項の式で確かめると、夫の基準額は約83.3万円、妻は約16.7万円です。妻が100万円借りると、妻の基準額を超えた約83.3万円が夫の基準額を使い切ります。その結果、夫は貸金業者から新たに借りられなくなります。
金融庁のQ&Aは、銀行のカードローンも一般の銀行の借入れと同じく総量規制の対象にならないとしています。日本貸金業協会も、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫などからの借入れは対象外と説明しています。一方、銀行グループの消費者金融が提供する「銀行系カードローン」は貸金業者の商品なので、総量規制の対象です。プロミスも公式サイトでこの区別を説明しています。
法律上の対象外は、上限がないことを意味しません。全国銀行協会は2017年3月、「銀行による消費者向け貸付けに係る申し合わせ」をまとめました。総量規制の対象外であることを強調する広告をしないこと、他行や貸金業者の借入れも踏まえて返済能力を確認すること、年収に対する借入額の比率を意識することなどに努めるとしています。金融庁の2019年9月の調査では、カードローンを扱う120行のうち102行が他行・貸金業者の借入れを含めた上限を設けていました。そのうち83行が年収の2分の1、14行が年収の3分の1を上限にしています。年収450万円なら、2分の1で225万円、3分の1で150万円です。これは2019年時点の集計で、各行の現在の基準は公表されていません。
銀行カードローンでも、収入証明の基準は貸金業法に近くなっています。同じ調査では、120行中116行が貸金業法と同じ水準(50万円超)かそれより厳しい基準で年収証明書を求めていました。三井住友銀行のカードローンも、申込金額が50万円を超える場合に収入を確認できる書類を求めています。信用情報の面でも、全国銀行個人信用情報センター、CIC、JICCの間で、銀行カードローンと貸金業者の貸付けの情報が交流されています。銀行と消費者金融のどちらで借りても、ほかの借入れは審査で見られるということです。
金融庁は、年収の3分の1を超える借入残高があっても、超えた部分をすぐに返すよう求められるわけではないと説明しています。利用者が行政処分や刑罰を受けることもありません。ただし、新しい借入れはできず、カードローンは契約後も3か月以内ごとに信用情報で調べられます。超過が分かれば、極度額の減額や新たな貸付けの停止が行われます。プロミスは、他社の借入状況や収入の状況で利用可能額が変わる場合があるとしています。
すでに返済が苦しい場合は、新しい借入れを探す前に相談してください。金融庁は全国の財務局に多重債務相談窓口を設けています。日本貸金業協会か全国銀行個人信用情報センターに申告すると、自分への新たな貸付けを止める「貸付自粛制度」も使えます。申込み前には、次の点を確認しておくと安心です。
フリーローンとカードローンの違いは、フリーローンとカードローンの違いの記事で確認できます。
使い道と金額が決まっている資金なら、極度額の枠を持つカードローンより、必要な額を一度に借りて毎月返す目的別ローンのほうが返済計画を立てやすい場合があります。どちらを選ぶ場合も、他の借入れを含めた毎月の返済額が家計に収まるかを先に確かめてください。
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調査日:2026年10月11日。銀行カードローンの上限に関する数値は、金融庁の2019年9月公表の調査時点のものです。各社の審査基準は公表されていません。
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