古い住宅の耐震改修には、固定資産税の減額措置があります。要件を満たすと、工事の翌年度分の固定資産税(家屋の住宅部分)が2分の1に減額されます。
ただし、どの工事でも対象になるわけではありません。建物の建築時期、工事の内容、工事費の額に条件があり、工事完了後の申告にも期限があります。この記事では、2026年10月6日時点で国土交通省が公表している資料をもとに、対象となる住宅、減額される金額の考え方、申告の手順を整理します。
目次
対象は、昭和57年(1982年)1月1日以前から所在する家屋です。この家屋を現行の耐震基準に適合させる改修を行うと、翌年度分の固定資産税が2分の1に減額されます。いわゆる旧耐震基準の時期に建てられた住宅を、現在の基準まで引き上げる工事を後押しする制度です。
減額の対象になるのは、住宅部分の固定資産税のうち床面積120㎡相当分までです。120㎡を超える部分は通常どおり課税されます。また、減額されるのは家屋にかかる固定資産税で、土地の固定資産税は対象外です。
減額期間は原則1年度分です。改修前の住宅が「通行障害既存耐震不適格建築物」だった場合は、2年度分が2分の1に減額されます。これは、地震で倒れると避難路などをふさぐおそれがあるとして、自治体が耐震改修促進計画で指定した道路沿いの建物です。自宅が該当するかどうかは、市区町村の担当窓口で確認できます。
適用期限は令和13年(2031年)3月31日までです。この日までに改修工事を終える必要があります。
「翌年度分」とは、工事が完了した日の翌年度に課される固定資産税を指します。固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課されるため、たとえば2026年中に工事が完了した場合は、原則として2027年度分が減額の対象になります。年末に完了する工事は申告期限が年明けにかかるため、完了日と提出日を早めに確認しておきましょう。
工事費の総額と、税金が減る額は別物です。工事費が200万円でも300万円でも、減るのは翌年度の固定資産税の一部だけで、工事費の半額が戻るわけではありません。
たとえば、対象住宅部分(床面積120㎡相当分まで)の翌年度の固定資産税額が8万円だったとします。2分の1の減額で4万円が減り、その年度に納める額は4万円になります。この例は、8万円がすべて120㎡相当分の対象額に収まっているという前提です。
| 項目 | 金額(仮定) |
|---|---|
| 対象住宅部分(120㎡相当分まで)の翌年度固定資産税額 | 8万円 |
| 減額される額(2分の1) | 4万円 |
| 減額後に納める額 | 4万円 |
床面積が120㎡を超える住宅では、超えた部分の税額は減額されないため、家屋全体の税額がそのまま半分になるわけではありません。実際の税額は、市区町村から届く納税通知書の課税明細で確認してください。減額が受けられるのは原則1年度分(通行障害既存耐震不適格建築物は2年度分)である点も、試算するときに押さえておきましょう。
国土交通省の資料に示された主な要件は次のとおりです。
| 確認項目 | 要件 |
|---|---|
| 建物の時期 | 昭和57年1月1日以前から所在する家屋 |
| 工事内容 | 現行の耐震基準に適合する耐震改修 |
| 工事費 | 耐震改修工事費が税込50万円超(50万円ちょうどは対象外) |
| 店舗等併用住宅 | 床面積の2分の1以上が居住用 |
| 工事の期限 | 令和13年3月31日までに工事を行うこと |
| 減額内容 | 翌年度分を2分の1(120㎡相当分まで)。通行障害既存耐震不適格建築物は2年度分 |
| 申告期限 | 工事完了日から3か月以内に市区町村へ |
工事費の要件は「50万円を超える」です。税込でちょうど50万円の工事は満たしません。見積の段階で、耐震改修にあたる工事費が税込でいくらになるかを確認しておくと安心です。
木造住宅では、日本建築防災協会の「木造住宅の耐震診断と補強方法」による一般診断法で上部構造評点1.0以上となり、地盤と基礎が安全であることが基準です。精密診断法(時刻歴応答計算による方法を除く)で評点1.0以上とする方法もあります。マンションなどでは、各階の構造耐震指標(Is値)0.6以上などが基準とされています。共同住宅は、住戸単位ではなく棟全体で現行の耐震基準を満たす必要があるため、一住戸だけの工事では対象になりません。
申告の段階で書類が足りないと、減額を受けられないおそれがあります。次の順番で進めると安心です。
1. 耐震診断:現状の評点を確認し、どこを補強すべきかを把握します。改修後に評点1.0以上を確保できる計画かどうかが出発点になります。
2. 見積・契約:耐震改修の工事費が税込50万円を超えるかを確認します。工事請負契約書の写しと、耐震改修の費用が確認できる書類は申告に使うため、必ず保管しましょう。
3. 証明書の取得:工事後、増改築等工事証明書、住宅耐震改修証明書、住宅性能評価書のいずれかを用意します。増改築等工事証明書は、登録された建築士事務所に属する建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人のいずれかが発行します。住宅耐震改修証明書は地方公共団体の長、住宅性能評価書は登録住宅性能評価機関が発行します。
4. 市区町村へ申告:工事完了日から3か月以内に、固定資産税減額申告書と上記の書類(またはその写し)を、家屋がある市区町村の窓口へ提出します。証明書の発行に時間がかかることもあるため、工事中から発行者と段取りを決めておくと期限に間に合わせやすくなります。
固定資産税の減額は、市区町村へ申告する地方税の制度です。耐震改修の所得税控除は確定申告で税務署に申告するため、窓口も期限も異なります。片方の手続きをしただけでは、もう片方は適用されません。
自治体の耐震診断・改修の補助金は、さらに別の制度です。補助額や対象は地域によって大きく違い、工事の契約前に申請が必要な例も多くあります。着工前に、お住まいの自治体の窓口やホームページで確認してください。
固定資産税の申告書の様式や添付書類も、市区町村によって細かな違いがあります。この記事の内容は2026年10月6日時点の公表資料に基づくもので、個別のケースで適用されるかどうかは自治体の判断によります。
耐震改修は、内容によって数百万円規模になることがあります。減税や補助金だけで工事費がまかなえるわけではないため、自己資金とのバランスを考えておくことが大切です。
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出典:国土交通省「耐震改修に係る固定資産税の減額措置」、国土交通省「住宅リフォームの税制」関連ページ(2026年10月6日確認)
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