法人税や消費税、源泉所得税、社会保険料の納付が苦しいときは、融資を探す前に税務署と年金事務所へ猶予を相談するのが先です。国税と厚生年金保険料等には「換価の猶予」があり、要件を満たせば原則1年以内の分割納付が認められる場合があります。猶予中は延滞税や延滞金の負担も軽減の対象です。
借りて払うかどうかの判断は、猶予を相談した後で十分間に合います。後半の試算では、猶予が認められた場合の延滞税は借入利息より小さくなりました。ただし猶予は免除ではありません。分割納付の計画どおりに払えるかを資金繰り表で確かめ、足りない分だけ借入を検討する順番が安全です。
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国税庁によると、換価の猶予は次の要件をすべて満たすときに認められる場合があります。一時に納付すると事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがあり、納税について誠実な意思があること。猶予を受ける国税以外に滞納がなく、納期限から6か月以内に申請することです。
担保は原則として必要です。ただし猶予額が100万円以下、猶予期間が3か月以内、提供できる財産がないといった場合は不要となります。猶予期間は1年の範囲で、最も早く完納できると認められる期間に限られます。猶予を受けた税金は、原則として猶予期間中の各月に分割して納める決まりです。
納税の猶予は、災害や盗難、病気、事業の休廃業、事業の著しい損失などで一時に納付できない場合の制度です。国税庁のFAQでは、黒字でも要件を満たせば猶予を受けられるとしています。申請書には財産収支状況書を添え、猶予額が100万円を超える場合は財産目録と収支の明細書が必要です。
猶予を受けても申告や納付の期限そのものは変わらず、延滞税は納期限の翌日から発生します。軽減が始まるのは申請日からです。納期限を過ぎてから申請すると、申請日の前日までは軽減されません。払えないと分かった時点で、所轄の税務署の徴収担当へ電話するのが第一歩です。
厚生年金保険料等にも換価の猶予があります。日本年金機構の案内では、納期限から6か月以内に管轄の年金事務所へ申請し、1年以内の期間に限り認められる場合があります。認められると分割納付ができ、猶予期間中の延滞金も一部が免除の対象です。ただし申請する月以外の保険料を滞納していると、原則として認められません。
納付の猶予は、災害や盗難、事業の休廃止、事業の著しい損失などが対象です。著しい損失とは、申請前1年間に前年の利益の2分の1を超える赤字が出た場合をいいます。どちらも猶予額が100万円を超える場合は担保の書類が必要です。分割計画どおりに払わない場合や新たな滞納が出た場合は、猶予が取り消されることがあります。
住民税や事業税などの地方税は、都道府県や市区町村の担当窓口が相談先です。地方税法にも徴収の猶予と申請による換価の猶予があり、期間は1年以内です。換価の猶予の申請期限は各自治体の条例で定める期間なので、国税と同じ6か月とは限りません。労働保険料は都道府県労働局が窓口です。
| 対象 | 相談窓口 | 換価の猶予の申請期限 | 放置した場合の率(令和8年) |
|---|---|---|---|
| 法人税・消費税・源泉所得税など国税 | 所轄の税務署(徴収担当) | 納期限から6か月以内 | 延滞税:2か月まで年2.8%、その後年9.1% |
| 厚生年金保険料・健康保険料 | 管轄の年金事務所 | 納期限から6か月以内 | 延滞金:3か月まで年2.8%、その後年9.1% |
| 住民税・事業税など地方税 | 都道府県・市区町村の担当窓口 | 自治体の条例で定める期間 | 各自治体で確認 |
国税は期限を過ぎると延滞税が自動的にかかります。令和8年の割合は、納期限の翌日から2か月までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。督促状が届いても納付しないと、財産の差押えなどの滞納処分を受ける場合があります。
社会保険料は、督促状の指定期限までに納めれば延滞金はかかりません。指定期限を過ぎて納めると、納付期限の翌日から3か月までは年2.8%、その後は年9.1%で延滞金がかかります。日本年金機構は完納の見込みが立たない場合、預金や売掛金を調べたうえで差押えを行うとしています。財産調査は、必要に応じて取引先に対する売掛金の照会にも及びます。
金融機関や制度融資では、納税証明書の提出や納税要件を求められる点に注意が必要です。たとえば東京都中小企業制度融資の要項は、租税の未申告・滞納や社会保険料の滞納がないことを基本要件の一つとし、完納の見通しが立つ場合などは例外としています。商工会議所が推薦するマル経融資でも、武蔵野商工会議所の案内は所得税や法人税などの完納を条件に挙げています。
猶予中に納税証明書を取るとどうなるか、国税庁のFAQに答えがあります。未納税額を示す「その1」には猶予中である旨が備考欄に記載されます。未納がないことを示す「その3」は、猶予を受けている税目では発行されません。社会保険料納入証明書にも猶予期間が表示されます。
猶予の事実は書類に出るので、隠さずに説明する方が話が早くなります。許可通知書と分割納付の計画、直近の資金繰り表をそろえて相談しましょう。滞納のまま放置するより、猶予を受けて計画どおり払っている方が説明しやすくなります。それでも審査の結果、希望に沿えない場合はあります。
例として、納期限が2026年8月31日の国税300万円を11月30日に完納する場合を考えます。期間は91日で、うち61日が2か月以内、残り30日がその後の期間です。延滞税は「税額×割合×日数÷365」で求め、税額の1万円未満と延滞税の100円未満は国税通則法に従い切り捨てます。
換価の猶予を受けた期間の延滞税は、租税特別措置法94条2項で「猶予特例基準割合」を超える部分が免除されます。この割合は平均貸付割合に年0.5%を加えたもので、国税庁が示す令和8年の利子税特例基準割合と同じ定義です。そのため令和8年中は年1.3%に相当します。下表では納期限までに申請し、分割で残高が減らない場合を上限として計算しました。
| ケース | 計算 | 3か月分の負担 |
|---|---|---|
| 国税を猶予なしで納付 | 300万円×2.8%×61日÷365+300万円×9.1%×30日÷365 | 約3万6,400円 |
| 国税の換価の猶予(上限) | 300万円×1.3%×91日÷365 | 約9,700円 |
| 社会保険料を督促指定期限後に納付 | 300万円×2.8%×90日÷365(納付日の前日まで) | 約2万700円 |
| 年4.05%で借りて納付(仮定) | 300万円×4.05%×91日÷365 | 約3万291円 |
| 年5.65%で借りて納付(仮定) | 300万円×5.65%×91日÷365 | 約4万2,258円 |
借入の金利は、日本政策金融公庫国民生活事業の基準利率(無担保・税務申告2期以上、令和8年10月1日現在)の幅を当てはめた仮定です。実際の金利は融資制度や審査で決まり、保証料がかかる場合もあります。猶予が認められれば、3か月の負担は借入利息より小さくなります。一方、猶予なしでは2か月を超えた分が年9.1%となり、この例でも借入利息と同程度の負担で、滞納が長引くほど差は開いていきます。
まず納期限の前に、税務署の徴収担当と年金事務所へ電話します。地方税があれば自治体の窓口にも連絡します。次に今後6〜12か月の資金繰り表を作り、毎月いくらなら分割で払えるかを出してください。消費税の中間申告は、売上が大きく減っていれば仮決算で納税額を抑えられる場合があります。
そのうえで不足が残るなら、借入を検討します。比べるのは、猶予中の延滞税と借入の利息・保証料の合計、そして返済原資があるかどうかです。借入で払っても、売上が戻らなければ返済が新たな負担になります。審査で見られる書類の準備はビジネスローン審査の必要書類を徹底解説も参考にしてください。
猶予の相談を済ませたうえで、民間金融機関からの借入条件も比べたい場合は、Tasukari(タスカリ)が使えます。CrowdLoanが運営する法人・個人事業主向けの融資マッチングサービスで、無料の事前審査の結果を見た複数の銀行から、金利や返済期間の提案を受けて比較できます。審査は保証会社と金融機関が行うため、融資の可否や金利、提案の数を約束するものではありません。
調査日:2026年10月8日。延滞税・延滞金の割合や制度の要件は改正や年ごとの告示で変わることがあります。手続きの前に各窓口で最新の内容を確認してください。
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