令和8年度の業務改善助成金は、事業場内最低賃金を50円・70円・90円のいずれかのコースで引き上げ、生産性向上の設備投資等を行った中小企業に、費用の一部を助成する制度です。助成率は4/5または3/4で、上限額は最大600万円です。申請期限は都道府県ごとに異なり、地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日の早い方で締め切られます。
この記事は2026年10月8日時点の公式情報で確認しています。東京や大阪など10月1日発効の地域は9月30日で締め切られました。一方で、京都や熊本、沖縄などは11月まで申請できます。助成金は概算払がなく、設備代金は1月31日までに全額を支払う必要があります。
入金までの立替資金を先に確保しておくことが、この制度を使ううえでの実務上の要点です。
令和8年度の対象者と賃上げの条件
対象は、資本金または常時使用する労働者数が業種ごとの基準以下の中小企業事業者です。大企業が株式の2分の1以上を持つ会社など、みなし大企業は除かれます。申請は工場や店舗などの事業場ごとに行います。
対象となる事業場は、事業場内最低賃金が令和7年度の地域別最低賃金以上、令和8年度の地域別最低賃金未満の事業場です。以前は「地域別最低賃金との差額50円以内」が条件でした。令和7年9月から改定後の地域別最低賃金未満まで範囲が広がり、令和8年度も続いています。改定後の額と同額の事業場は対象外です。
引き上げの対象者は、雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者です。令和8年度から雇用保険被保険者に限定されました。週の所定労働時間が20時間以上であることも条件です。従業員がいない事業者は対象になりません。
賃上げは交付申請の後に行います。申請前に引き上げた場合は対象外です。引上げは地域別最低賃金の発効日の前日までに1回で実施し、引上げ後の額を就業規則等に定めます。10人未満の事業場では、引上げ後の額と引上げ日を記載した書面に、労働者代表の意見書を添えて周知します。労働契約書や労働条件通知書は、この書面として認められません。
申請期限は都道府県ごとに違う
申請期間は令和8年9月1日からです。締切は、事業場がある都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日と11月30日のうち、早い日です。郵送は期限内に労働局へ届く必要があり、消印は基準になりません。電子申請はJグランツで期限内に申請を完了させます。
2026年10月8日時点で締切前の地域を、令和8年度の地域別最低賃金一覧から整理しました。山口は10月8日発効のため、10月7日で締め切られています。
| 申請期限(発効日の前日) |
都道府県 |
| 10月9日〜10月17日 |
島根(9日)、広島(10日)、秋田(13日)、静岡(14日)、福島(15日)、茨城(17日) |
| 10月23日〜10月29日 |
宮崎(23日)、鹿児島(24日)、青森・高知(28日)、山形(29日) |
| 10月31日〜11月15日 |
山梨・徳島・愛媛・大分(10月31日)、長崎(11月1日)、佐賀(11月14日)、京都(11月15日) |
| 11月30日 |
岩手・熊本・沖縄(上限の11月30日) |
期限が土日祝日に当たる場合、郵送と来庁はその前の開庁日までに労働局へ届ける必要があります。広島、茨城、京都などが該当し、電子申請だけは期限日当日まで申請できます。期限に余裕がある地域でも、賃上げは申請後かつ発効日の前日までに済ませる必要があります。助成金は予算の範囲内で交付され、申請期間中に受付を終える場合もあります。申請前に管轄の労働局の受付状況を確認してください。
助成上限額と助成率
上限額は、コースと引き上げる労働者数で決まります。50円コースは30万円から110万円、70円コースは40万円から230万円、90円コースは90万円から450万円です。引き上げる人数が1人と2〜3人の区分では、事業場規模30人未満の事業者に高い上限が適用されます。たとえば90円コースの2〜3人は、通常150万円、30人未満なら240万円です。
10人以上の区分は特例事業者だけが使えます。上限は50円コース130万円、70円コース300万円、90円コース600万円です。特例事業者は、事業場内最低賃金が1,050円未満の事業者か、直近6か月平均の利益率が前年同期より3%ポイント以上下がった事業者です。後者はパソコンやタブレットの新規導入も対象経費になります。
助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。助成額は対象経費に助成率を掛けた額と上限額の低い方で、1,000円未満は切り捨てます。対象経費は10万円以上が必要です。複数の事業場で申請しても、事業主単位の上限は年間600万円です。
賃上げと設備投資をセットにした計算例
熊本県の事業場を想定した仮定の例で計算します。従業員は12人で、事業場内最低賃金は1,040円です。熊本の地域別最低賃金は1,034円から1,092円に改定され、12月1日に発効します。この事業場は対象範囲に入ります。他の9人は引上げ後の額以上と仮定し、時給1,040円の3人を引き上げ、税抜150万円の設備を導入する想定です。
| 項目 |
70円コース |
90円コース |
| 引上げ後の時給 |
1,110円 |
1,130円 |
| 上限額(30人未満・2〜3人) |
100万円 |
240万円 |
| 150万円×4/5 |
120万円 |
120万円 |
| 助成額 |
100万円 |
120万円 |
| 設備の自己負担 |
50万円 |
30万円 |
| 3人の賃金増加(月160時間) |
月33,600円 |
月43,200円 |
助成率は、1,040円が1,050円未満なので4/5です。70円コースでは120万円が上限の100万円を超え、助成額は100万円になります。90円コースでは上限240万円を下回るため、120万円がそのまま助成額です。ただし90円コースの賃金増加は月9,600円多く、社会保険料の増加も別にかかります。助成額の差20万円と、毎月の人件費の増加を並べて比べてください。厚生労働省のリーフレットにも、8人を90円引き上げて600万円の設備を入れ、上限の450万円が支給される例が載っています。
1月31日までの支払いと立替資金
事業完了期限は、交付決定の属する年度の1月31日です。納品・代金の支払完了・賃金引上げの3つを、この日までに終える必要があります。交付決定前の発注や支払いは、理由を問わず対象外です。やむを得ない理由があれば、理由書を出して3月31日まで延長される場合があります。
支払いは振込が原則です。クレジットカードは、期限までに口座から引き落とされていなければ対象外になります。ポイントやギフトカードでの支払いは認められていません。
助成金の入金は事業完了後です。完了日から1か月か翌年度4月10日の早い日までに実績報告を出し、労働局が原則20日以内に額を確定し、その後に振込となります。Q&Aでは、概算払は受けられないと明記されています。計算例では、設備代150万円に消費税を加えた額を1月末までに全額支払います。1月31日に完了した場合も、助成金の100万円や120万円は実績報告と審査を経た後の入金です。
この期間の資金は、自己資金、販売店との支払条件の調整、融資の3つで準備します。リースや分割払いは、交付決定の年度に支出した分だけが対象になる点に注意してください。厚生労働省のリーフレットは、日本政策金融公庫の働き方改革推進支援資金を紹介しています。事業場内最低賃金の引上げに取り組む事業者向けの設備資金・運転資金です。民間金融機関の事業性融資と比べる場合は、Tasukariで複数の提案を並べる方法もあります。設備資金を契約前に準備する流れは
個人事業主の厨房機器入れ替え、設備資金は契約・支払いの前にどう準備する?も参考にしてください。
必要書類と不支給になりやすい例
交付申請には、交付申請書と事業実施計画書のほか、二者以上の見積書と申請前6か月分の賃金台帳の写しを付けます。見積りは10万円未満を除いて二者以上が必要で、交付決定後は最低価格の業者と契約します。中古品の場合、古物商の許可を持つ三者以上の見積りが必要です。実績報告では、引上げ後の賃金台帳と振込記録、通帳や総勘定元帳の写しを出します。
対象外の経費も確認してください。特種用途以外の自動車は令和8年度から対象外です。LED電球への交換、エアコンや内装工事、広告宣伝費、汎用の事務機器も対象になりません。
不交付になる例として、申請の6か月前から一定期間内の解雇や退職勧奨、時給の引下げがあります。同じ設備に国や自治体の補助金を受けている場合や、1年以内に労働基準監督署の是正勧告を受けた場合も対象外です。厚生労働省は、同省の委託を装って助成金を勧誘する業者にも注意を呼びかけています。
2027年度(令和9年度)は公式発表待ち
2026年10月8日時点で、令和9年度の業務改善助成金の要綱や予算について、公式資料は確認できていません。コース区分や上限額、申請期間が同じになるかは確認待ちです。令和8年度も前年度からコースや助成率の境目が変わりました。来年度に検討する事業者は、厚生労働省の公表を待って最新の要綱を確認してください。
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