住民税(普通徴収)や固定資産税を納期限までに全額用意できないときは、納期限の前に役所へ相談するのが最初の一手です。相談すると、分けて納める分納や、法律にもとづく徴収の猶予・換価の猶予を案内される場合があります。猶予が認められると、2026年中の延滞金は年1.3%に下がるか、全部または一部が免除されます。カード払いやローンでの立替は、相談をしても足りない分が残ったときの手段です。その場合も、借入の金利と延滞金の割合を先に比べてください。この記事では、2026年の延滞金の割合と計算式、督促から差押えまでの流れ、窓口と猶予の条件、立替の費用の試算を、自治体と総務省の資料をもとに説明します。
目次
納付書を受け取って全額を用意できないとわかったら、次の順番で進めてください。
相談を先にする理由は三つあります。一つ目は、猶予が認められると延滞金の割合が大きく下がることです。二つ目は、徴収の猶予の期間中は新たな督促や差押えを受けないことです。目黒区は徴収の猶予について「猶予期間中は、新たな督促や差押などの滞納処分をされることがなく、延滞金も軽減されます」と案内しています。三つ目は、減免を受けられる期限です。世田谷区は住民税の減免について「減免ができるのは、納期限が過ぎていない税金に限られます」としています。
この記事は納税のための借入を勧めるものではありません。借りたお金には利息がかかり、返済が新たな負担になります。まず役所との相談で負担を減らせるかを確かめてください。
住民税と固定資産税の督促と差押えは、地方税法で流れが決まっています。市町村民税は第329条と第331条、固定資産税は第371条と第373条が同じ内容を定めています。
堺市の説明は「督促状を放置したり、催告を無視したりしても問題の解決にはなりません」というものです。世田谷区は、差押えの対象になる財産として給与・預貯金・年金・不動産・生命保険等を挙げています。給与や預金口座が差し押さえられると、生活費の計画が立てにくくなります。督促状が届いた段階でも相談はできますが、早いほど選べる手段が多いと考えてください。
延滞金の割合は、法律の本則では年14.6%、納期限の翌日から1か月までは年7.3%です。ただし当分の間は特例があり、毎年の「平均貸付割合」をもとに割合が決まります。総務省の資料では、2026年分の平均貸付割合は0.8%です。延滞金特例基準割合はこれに1%を足した1.8%です。
表1 2026年1月1日〜12月31日の期間に適用される延滞金の割合
| 期間 | 法律の本則 | 2026年の割合 | 決まり方 |
|---|---|---|---|
| 納期限の翌日から1か月を経過する日まで | 年7.3% | 年2.8% | 延滞金特例基準割合+1% |
| 1か月を経過した日から納付の日まで | 年14.6% | 年9.1% | 延滞金特例基準割合+7.3% |
| 徴収の猶予・換価の猶予を受けている期間 | 年7.3% | 年1.3% | 平均貸付割合+0.5%(猶予特例基準割合) |
出典:総務省「加算金、延滞金、還付加算金」資料、世田谷区「延滞金」(2026年10月15日確認)。
2026年10月15日時点の総務省、目黒区、世田谷区、名古屋市、堺市、泉南市の掲載は、いずれも2.8%と9.1%で一致していました。割合は毎年見直されます。泉南市の資料は、毎年1月1日以降の割合が「変更される可能性があります」としています。2027年以降の期間の割合は、まだ公表されていません。
堺市は2026年の計算式を次のように示しています。
延滞金=税額×(A)÷365×2.8%+税額×(B)÷365×9.1%
(A)は納期限の翌日から1か月を経過する日までの日数、(B)はその翌日から納付の日までの日数です。端数は地方税法第20条の4の2と名古屋市の説明に沿って、次のように処理します。
名古屋市は、20万円の固定資産税(納期限2026年3月2日)を4月25日に納めた例を載せています。1か月以内の31日分が475円、それ以降の23日分が1,146円で、合計1,621円から100円未満を切り捨てた1,600円が延滞金です。この記事の試算は、Pythonでこの例を同じ金額で再現したうえで計算しています。
次の前提で試算します。税額は20万円です。納期限は仮に2026年6月30日とします。実際の納期限は自治体と期別で異なります。全額を2026年12月30日に納めるとすると、遅れた日数は183日です。
同じ183日に猶予が認められ、全期間に年1.3%が適用された場合は、200,000円×1.3%×183÷365=1,303円で、延滞金は1,300円です。延滞金が全額免除されれば負担はさらに減ります。この条件では、猶予が認められた場合の延滞金は、相談せずに遅れた場合のおよそ6分の1です。
税額10万円で、納期限8月31日の分を10月30日に納めたとします。計算すると、1か月以内の30日分が230円、それ以降の30日分が747円で、合計977円です。1,000円未満なので延滞金はかかりません。しかし、納期限を過ぎた時点で滞納です。法律上は督促状が送られ、その後も納めなければ差押えの対象になります。延滞金が0円でも滞納処分は進みます。延滞金がかからないから遅れてもよい、とは考えないでください。
相談先は納税通知書に書かれた担当課です。多くの市町村では、住民税も固定資産税も市役所や町村役場の税務担当が扱います。東京23区は例外です。東京都主税局によると、23区内の固定資産税・都市計画税は都税で、相談先は所管の都税事務所です。住民税の相談先は区役所の担当課なので、23区に住宅を持つ人は二つの税で窓口が分かれます。
分納は、1回の金額を減らして回数を増やす納め方です。法律上の猶予とは別の、役所との相談で決める納付計画です。世田谷区は分納について「分割納付中も督促状が送付され、本来の期別納期限が過ぎた時点から延滞金の加算対象になります」と説明しています。分納だけでは延滞金は止まりません。延滞金を軽くしたい場合は、猶予を申請できるかどうかを窓口で確認してください。
猶予には、主に「徴収の猶予」と「換価の猶予」があります。どちらも原則1年以内です。申請しても認められない場合があり、猶予額に見合う担保を求められることもあります。
表2 徴収の猶予と換価の猶予の主な違い(目黒区・世田谷区・名古屋市の例)
| 項目 | 徴収の猶予 | 換価の猶予(申請による) |
|---|---|---|
| 主な要件 | 災害・盗難、本人や家族の病気・負傷、事業の休廃止や著しい損失、これらに類する事情 | 一時に納めると生活の維持や事業の継続が困難になるおそれがあり、納税に誠実な意思がある |
| ほかの滞納 | 名古屋市は猶予中に別の市税を滞納すると取消しの対象と案内 | 申請する税金以外に滞納がないこと |
| 申請期限 | 名古屋市は災害・病気等の理由なら期限なしと案内 | 目黒区は納期限から3か月以内、世田谷区・名古屋市は6か月以内 |
| 猶予中の効果 | 新たな督促・差押えを受けない。延滞金の軽減・免除 | 差押財産の換価(売却)の猶予。分割して納付。延滞金の軽減・免除 |
出典:目黒区、世田谷区、名古屋市(2026年10月15日確認)。
換価の猶予の申請期限が自治体で違うのは、地方税法第15条の6が期限を「条例で定める期間」としているためです。自分の自治体の期限を窓口で確認してください。猶予が認められても、分割納付の計画どおりに納めないと取り消される場合があります。名古屋市はこの点を取消しの事由として明記しています。
目黒区のオンライン納付相談では、本人確認書類と、直近3か月の収入と支出がわかる資料を用意するよう求めています。給与明細や記帳済みの預金通帳などです。目黒区は、資料の写しを出すまで分割納付の計画を承認できない場合があるとも説明しています。ほかの自治体でも、家計の状況を数字で示せると話が進めやすくなります。毎月いくらなら払えるかを先に計算して、相談の場で示してください。
給与から天引きされない分の住民税が普通徴収になると、納付書で年4回に分けて納めます。目黒区の案内では、特別区民税の納期は6月・8月・10月・1月です。1回分が払えない場合でも、次の期の納期限が来る前に相談してください。期をまたいで滞納が重なると、換価の猶予の「ほかに滞納がないこと」という要件を満たしにくくなります。
退職すると、給与天引きで納めていた住民税の残りを、本人が普通徴収で納めることになります。目黒区の回答では、10月末に退職した例で、11月から翌年5月までの7か月分を、翌年1月の納期に納めるとしています。数か月分がまとめて1回の納期に来るため、金額が大きくなりやすい点に注意してください。中央区は、病気や災害と並べて退職も一時的に納税が難しくなる事情に挙げ、猶予や分割納付の相談を呼びかけています。退職時に残りの税額を給与や退職金から一括で差し引いてもらった場合は、その年度分は完納です。
堺市は、固定資産税・都市計画税と住民税の普通徴収には年4回の納期があると案内しています。目黒区の納税時期の表では、固定資産税の納期は6月・9月・12月・2月です。賃貸収入の入金が遅れたり、空室が続いたりして払えない場合も、相談先は通知書の担当窓口です。23区内なら都税事務所になります。事業として賃貸を営む人が税金と社会保険料をまとめて資金繰りする場面は、事業者向けの猶予と融資の記事も参考になります。空き家の税額が上がる仕組みについては空き家の固定資産税の記事をご覧ください。
クレジットカードで納めると、税額とは別に手数料がかかります。金額は自治体や決済サービスで異なります。2026年10月15日時点の掲載で確認できた例は次のとおりです。
東京都の説明では、カード納付の納付日は支払手続きを完了した日です。東京都のカード納付はリボ払いや分割払いも選べますが、その場合は「各カード会社が定める手数料がかかる場合があります」と書かれています。カード会社の手数料率の例として、JCBは2026年10月1日以降の新規利用分からショッピングリボ払いを実質年率18.00%に改定すると案内しています。
先ほどと同じく、20万円を183日立て替える場合で比べます。カード一括払いの手数料は目黒区の例を使います。リボ払いとローンは、183日後に元金をまとめて返すと仮定した上限寄りの計算です。毎月返済すれば残高が減るので、実際の利息はこれより少なくなります。目黒区の納付でリボ払いを選べるかは確認していないため、リボ払いの行はカード会社の規約でリボ払いにできると仮定した計算です。ローンの年3%と年15%は比較のための仮定で、特定の商品の金利ではありません。年18%は、利息制限法の上限金利(貸付額に応じて15%〜20%)の範囲にある高めの水準として置いています。
表3 20万円の納付を183日立て替えた場合の費用の試算
| 方法 | 計算式(仮定) | 費用の試算 |
|---|---|---|
| 相談せず183日後に納付(延滞金) | 200,000×2.8%×31÷365+200,000×9.1%×152÷365 | 8,000円(8,054円を100円未満切捨て) |
| 猶予が認められた場合(年1.3%) | 200,000×1.3%×183÷365 | 1,300円(免除があればさらに少ない) |
| カードで期限内に納付し、翌月一括払い(立替は翌月の引落しまで) | 目黒区の決済手数料 | 2,145円 |
| カードで納付しリボ払い(年18.0%) | 2,145+200,000×18%×183÷365 | 20,194円 |
| ローンで立替(年3%と仮定) | 200,000×3%×183÷365 | 3,008円 |
| ローンで立替(年15%と仮定) | 200,000×15%×183÷365 | 15,041円 |
| ローンで立替(年18%と仮定) | 200,000×18%×183÷365 | 18,049円 |
出典:延滞金の割合と計算式は堺市、カード手数料は目黒区、リボ手数料率はJCB、上限金利は金融庁(2026年10月15日確認)。ローンの金利は仮定です。
試算からわかることは三つです。第一に、最も費用が少ないのは猶予が認められた場合でした。第二に、この条件で延滞金と同じ費用になる借入金利は、年約8.0%です。8,054円を、20万円を183日借りたときの年利に直すとこの水準になります。これより高い金利で借りると、利息だけを比べれば延滞金より高くつきます。第三に、カードの翌月一括払いは手数料が2,145円で済みますが、翌月の引落しで払える見込みがある場合に限られます。払えずにリボ払いに回すと、費用は延滞金の2倍を超えます。返済が長引いたときの利息の増え方は、カードローンを最低返済額だけ払うときの試算でも確認できます。
ただし、金額だけで決めないでください。延滞金のほうが安く見える場合でも、滞納を続ければ給与や預金の差押えに進みます。反対に、借入で税金を納めても、毎月の返済で生活が苦しくなれば問題は先送りになるだけです。
相談をしたうえで、不足分を借入で補うかどうかを考える段階になったら、複数の金融機関の条件を並べて比べると、金利と返済額の差が見えやすくなります。CrowdLoanは、借入の希望を登録すると複数の金融機関から提案を受けて比べられるサービスです。本審査の可否や適用される金利は各金融機関が判断し、個人によって異なります。提案の金利が延滞金や猶予中の割合より高い場合は、借りずに役所との相談を続けることも選択肢です。
延滞金は納期限の翌日から日割りで計算されます。ただし、確定した延滞金が1,000円未満なら全額切り捨てになるので、少額・短期間なら請求されないことがあります。延滞金がかからなくても滞納にはなるため、督促状は送られてきます。
かかります。世田谷区は、分納中も本来の期別納期限が過ぎた時点から延滞金の加算対象になると説明しています。延滞金の割合を下げたいときは、徴収の猶予や換価の猶予を申請できるか窓口で確認してください。
2026年1月1日から12月31日までの期間は、納期限の翌日から1か月以内が年2.8%、それ以降が年9.1%です。猶予を受けている期間は年1.3%です。2027年以降の期間の割合は毎年見直されます。
東京都は、納期限が過ぎた納付書でもeLお支払サイトで支払手続きができると説明しています。延滞金が発生した場合は、後日延滞金だけの納付書が届きます。ほかの自治体の扱いは、それぞれの案内を確認してください。
23区内の固定資産税・都市計画税は都税なので、納税通知書に書かれた所管の都税事務所に相談します。住民税は区役所の担当課なので、両方を相談したい場合は窓口が二つになります。
調査日:2026年10月15日。延滞金の割合、計算式、猶予の条件、カード納付の手数料は、以下の資料のこの日時点の掲載にもとづきます。試算は記事中に示した仮定による計算で、実際の金額は自治体の計算と異なる場合があります。
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