資金繰り表は、前月繰越、収入、支出、財務収支、翌月繰越の5つの欄を月ごとに並べ、3〜6か月先までの預金残高を見通す表です。融資を相談する前に作っておくと、いつ・いくら足りなくなるかが数字で説明でき、借りる額と返済の見通しも決めやすくなります。
作り方の順番は、過去の実績を月次試算表と通帳から書き出し、その実績をもとに先の月の予定を入れることです。日本政策金融公庫の標準の申込書類の一覧に、資金繰り表は入っていません。しかし、面談では事業計画や資産・負債がわかる書類を準備するよう案内されており、資金の動きを自分の言葉で説明できる状態は、相談の場で役に立ちます。
この記事では、中小機構と公庫の資料で表の構成を確認し、売上が黒字でも預金が減る月がある例を6か月分つくって見ます。例の数字はすべて仮定です。自分の事業の数字に置き換えて使ってください。
目次
中小機構のJ-Net21は、資金繰り表を、一定期間の現金の動きをまとめて手持ち資金の過不足を見えるようにした資料と説明しています。日本政策金融公庫の書式に沿った構成は、前月繰越、収入計、支出計、財務収支計、翌月繰越の5つです。前月繰越は、月次試算表の現金預金の合計と一致させます。
| 欄 | 入れるもの | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 前月繰越 | 前月末の現金預金の合計 | 試算表や通帳の残高と合わない |
| 収入計 | 現金売上、売掛金の現金回収、手形の期日落ち | 売上を立てた月ではなく、入金される月に入れる |
| 支出計 | 仕入・外注費、賃金給与、支払利息、その他の経費 | 賞与や年1回の支払いを入れ忘れる |
| 財務収支計 | 借入金と借入金の返済 | 返済は元本と利息を分けて考える |
| 翌月繰越 | 前月繰越+(収入計-支出計)+財務収支計 | マイナスや、月商より極端に低い月がないかを見る |
J-Net21は、年1回程度、設備投資や納税が加わる場合もあると補足しています。消費税や社会保険料の納付月は、特に忘れやすい支出です。損益計算書の利益と、預金の増減は別物だと意識して作るのが、この表の目的です。
次の例は、小規模な事業を仮定したものです。売上は6月700万円、7月800万円、8月900万円、9月600万円、10月650万円、11月700万円、12月800万円、1月900万円で、うち2割が現金売上、残り8割は2か月後に入金されます。仕入は売上の50%で当月に支払い、人件費150万円、その他の経費60万円は毎月かかります。借入の返済は月55万円で、11月に設備の購入300万円、12月に賞与200万円の支払いがあります。7月末の預金は100万円です。
| 月 | 収入計 | 経常の支出(仕入・人件費・経費) | 設備・賞与 | 財務収支(返済) | 翌月繰越 |
|---|---|---|---|---|---|
| 8月 | 740万円 | 660万円 | 0 | -55万円 | 125万円 |
| 9月 | 760万円 | 510万円 | 0 | -55万円 | 320万円 |
| 10月 | 850万円 | 535万円 | 0 | -55万円 | 580万円 |
| 11月 | 620万円 | 560万円 | 300万円 | -55万円 | 285万円 |
| 12月 | 680万円 | 610万円 | 200万円 | -55万円 | 100万円 |
| 1月 | 740万円 | 660万円 | 0 | -55万円 | 125万円 |
9月と10月は預金が増えますが、11月の設備代と12月の賞与で、12月末の残高は100万円まで落ちます。12月の売上は800万円なので、残高は月商の約8分の1です。公庫の経営改善計画書の手引きは、一般的には月商分(年間売上高の1か月分)程度の現金・預金を持っていることが望ましいと書いています。この例では、12月に700万円ほどの上積みがなければ、目安に届かない計算です。売上に対する利益が出ていても、入金が2か月遅れるため、売上が落ちた秋の回収額が冬の資金を細くします。
手元資金が足りない月は、借入や支払の延期、投資時期の見直しなどで先に手を打てます。運転資金の必要額は、公庫の手引きにある式の「売上債権+棚卸資産-仕入債務」で概算できます。売上が増える事業ほど、運転資金の増加を借入でまかなう必要が出ます。詳しい試算は、増加運転資金と黒字倒産の記事にまとめています。
表を作るとき、いちばん差が出るのは入金と支払の「ずれ」の置き方です。売上が立つ月と、お金が入る月は、取引先の締め日と支払サイトで決まります。たとえば末締め翌々月末払いなら、7月の売上が入るのは9月末です。仕入や外注費も、同じように締め日と支払日を確認して、支払う月に入れます。取引先ごとの条件がばらばらなときは、売上の大きい上位の取引先だけでも、個別に入れておくと精度が上がります。回収が遅れた実績があれば、その遅れも予定に反映させてください。
支出の側では、毎月かかるものと、年に数回だけかかるものを分けて洗い出します。家賃、人件費、リース料、返済は毎月です。一方、賞与、消費税や社会保険料の納付、保険料の年払い、設備の修繕は、月によって大きく動きます。通帳の過去12か月を見返すと、毎年同じ月に出ていく支払いが見つかります。見つけたら、来年の同じ月に必ず入れてください。先の月ほど「年に数回の支払い」の入れ忘れが、残高のずれになります。
中小機構の説明では、過去の資金繰り表は月次試算表と預金通帳からできるだけ作り、それをもとに3〜6か月先の資金状況を予見するのがよいとされています。予定の数字が実績とずれたら、そのずれの理由を書き添えると、相談先に状況を伝えやすくなります。売上の見込みは、前年同月の売上をもとに置くと、無理のない数字になります。
公庫の書式ダウンロードのページには、資金繰り計画を立てるときに記入する「資金繰り表」と「簡易版」、記入例があります。一方、公庫の経営改善計画書を出す場合でも、資金繰り表の添付は必須ではないと手引きに書かれています。銀行ごとに資金繰り表の提出を求める場面は違うため、提出が必要かは申込先に聞いてください。J-Net21は、融資の申込みでは資金繰り表を付けた稟議書を出すことになると説明していますが、これは一般的な説明で、必ず求められるという意味ではありません。
相談の前には、次の点を確認しておくと話が進みます。借りたい金額の根拠として、資金繰り表のどの月に、いくら足りなくなるかを示します。返済の欄には、金融機関との契約内容にもとづく返済額を入れます。資金繰りが厳しいときは、条件変更や新規借入が必要かどうかを検討するための表として使います。数字が合わない箇所は、空欄にせず、理由を書き添えてください。
| 状況 | 表で見るところ | 次の動き |
|---|---|---|
| 初めて作る | 過去3か月の実績と、前月繰越の一致 | 簡易版の様式から始める |
| 売上が伸びている | 入金が遅れる分の運転資金 | 借入の必要額を式で概算 |
| 季節で売上が変わる | 売上が落ちる月の翌月以降の残高 | 繁忙期に資金を残す |
| 大きな支払いが先にある | 設備・納税・賞与の月の繰越 | 融資の時期を逆算 |
| 返済が重い | 財務収支の返済額と繰越 | 返済条件の見直しを早めに相談 |
資金繰り表は、一度作って終わりではなく、毎月更新して使う表です。更新を続けると、実績と予定のずれから、自分の事業の入金と支払のくせが見えてきます。
資金繰り表で足りない時期が見えたら、まず取引銀行や日本政策金融公庫に相談したうえで、ほかの金融機関の条件も比べる選択肢があります。Tasukari(タスカリ)は、CrowdLoan(クラウドローン)が運営する売上500万〜3億円クラスの小規模事業者向けの融資マッチングサービスです。スマホで3分程度の入力をすると、保証会社の事前審査で借りられる見込みを確認でき、その結果を見た銀行から融資条件の提案が届きます。診断・事前審査は無料で、融資が実行された場合は銀行所定の金利がかかります。審査は保証会社・金融機関が行い、CrowdLoanが融資の可否・条件・提案を約束するものではありません。既存の借入に延滞がある場合は、審査で不利になることがあります。
調査日:2026年10月11日。資金繰り表の様式や求められる資料は、金融機関ごとに異なります。例の数字は説明用の仮定で、実際の事業の実績ではありません。
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